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2017年10月20日23:27

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[観劇]メアリー・ステュアート/清流劇場

原作:フリードリヒ・シラー。
舞台両脇に置かれた花菱模様の四角柱は、回転することで舞台進行を示すが、
壇上に置かれた二つの椅子(玉座)という舞台配置は不動のまま。
囚われの女王、メアリーは能「安達原」で使われるのに似た竹製の可動式「檻」に入れられ、実際に進行中の場面に不在であるときも、常に舞台後方にあって、存在感を示し続ける。意匠も洋装の上にマントのように和装を羽織った独特の和洋折衷ぶりである。

ここで描かれるエリザベス時代はヤン・コットが「ハムレット」の背景として喝破したような陰謀渦巻く宮廷ドラマそのもの、二人の女王の感情と権力を巡る対立とその間で右往左往する寵臣たちは時に喜劇的でさえある。
特に二人の女王を両天秤に掛けた挙句、他人にすべての罪をなすりつけて事なきを得るレスター伯の(役者さんの元色男で最近落ち目気味なちょい悪親父・風の容貌もあいまって)迫真の…というか必死すぎる大芝居は抱腹絶倒もので、女王二人の影を薄くしかねないほどだった。とにかく台詞の多い芝居で、しかも少なからぬ場面は激情の横溢する怒鳴り合いなので、面白いけど見ていてものすごく消耗するお芝居でありました。前述したレスター伯の言い逃れといい、メアリー処刑の責任について、ブラック企業の鬼上司なみにヒドい忖度強制と責任押しつけをかますエリザベス女王、など笑いどころはある筈なのだが、客層が上品なのかマジメな古典劇としての先入観なのか誰もクスリともしないも辛いところでした。シェイクスピア劇になぜ道化が必要なのかよく分かろうというもの。
 自らの宿命を受け入れ、逍遥と死に向かうメアリー、民衆の声と自らの恐怖に突き動かされメアリを処刑した後、寵臣たちにも去られて孤独に玉座に留まるエリザベス、敗者と勝者、二人の女王に等しく降り注ぐ赤い雪は、荘重にして美しいラストシーンとして記憶に残る。
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