ドストエフスキー「罪と罰」を基にしたオムニバス３作…という触れ込みだが、
２作目は多分「カラマーゾフの兄弟」？、３作目は「悪霊」が元ネタだったように思う。
もちろん、ドストエフスキーがそれだけの現代性を持ったテキストだということでもあるが、そのモチーフに巧みに時事問題を取り込んだ脚本は３作ともにきわめてすぐれたものだった。
� 嶌瓩世辰燭衄海世辰燭蝓�
殺した男をビニールに詰め、掃除機で真空パックを作る…というショッキングな場面から始まるがやがて死体がのんきに口をきき始めて…京都舞鶴の女学生殺人事件をも取り込み、ミステリ調に仕立てられた「罪と罰」。
冒頭の殺人場面のリピートはしつこく蘇る死体におかしさはあるが、やや冗長。客席の反応はもっとあっても良いハズだったが…
余命わずかな男が、「本当に正しいこと」をするために犯した殺人が思わぬ結末に…というプロットの意外性が純粋によくできていて後半になるほど面白さが走り出す。
��Who are you?Why are you here?
３人の子供たちがサッカーをしている場面で始る。空を見上げると何か白く輝くものが飛ぶ―
それは「死神」だと少女は言う。やがて彼らの長じた姿がそれぞれ日本の元介護施設で働くカメラマン志望、英国のムスリムでやがてテロリストとなる男(ジハード・ジョンがモデルとおぼしい)、そしてアメリカで無人機のオペレーターを勤める妊婦だと分かっていく。
そして彼らは戦乱のシリアで出会うことになる。最悪のグラウンド・ゼロで―
時事ネタをこうもあざといほど散りばめて破綻なく、緊密に構成する脚本が素晴らしい。
そして幻視される少年たちの遊ぶ姿に、将来の皇帝暗殺者を囲んで「カラマーゾフ万歳」と唱和するあの少年たちの姿が確かに重なりあう。
��世の中は間違いに満ちていて、いつだって僕はそれを黙って見過ごす
脚本家の男が元カノとの再会で思い出す、自らの創作の原点となるある事件…
一転して私小説的なストーリーだが、うだつのあがらない男、元カノ、彼女の認知症の祖母の奇妙な交流が実に生き生きと描かれていて、平凡なだけに胸に迫るものがある。男の酔っ払いの演技も上手いし、元・彼女のセクシーで「できる女」感もよく出ていた。惚れた腫れたのドロドロ話はとっくに澄んだ、オトナのお話…でもあり大人になりきれない男の通過儀礼でもあり。
説得力ある人物が舞台に立つ、それだけで充分演劇は成立する、という締めに相応しい演劇の正道を行く一本。
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