mixiユーザー(id:4550802)

2017年08月16日23:51

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Random Acts of Senseless Violence/ Jack Womack

 『羅生門』『人形の家』『アンネの日記』『少女革命ウテナ』をアメリカという器に注いで、ゴリゴリゴリゴリ器も割れよと混ぜ立てて、出来たドロリと真っ黒な液体、というが読了後の率直なイメージ。このタイトル(なんて素晴らしくも禍々しい、鉄棘がびっしり生えたような題であることか!)、この内容で、採った形式が12歳の少女の半年間の日記というのも底意地の悪い。最初は少女らしく平明な文章が、大統領が続けて暗殺され、暴動が次第に広まる不穏な社会情勢、家族の貧窮と離散、新たな(社会階層の異なる)友人との出会い等々に伴い、どんどん正統的な「英語」から離れていく、その文体の変転が記される心情や事件以上に彼女の変化を雄弁に物語る。喪って喪ってその果てに、自分自身もまたセンスレス・ヴァイオレンスの一部と化したような彼女の、それまで創造上の友人「アン」と呼んでいた日記帳への決別宣言は高らかな鬼気に満ち、堕天の哀嘆とも覚醒の鬨声とも、軽軽に断ずることはできまい。
 ブラック企業でパワハラ三昧の果てに過労死する父親、高学歴ワーキングプアで睡眠薬オーバードーザーな母親、と家庭環境の悲惨さは描かれた当時よりむしろ現代の日本に刺さる部分もある。…12歳少女が百合百合チュッチュした挙句悪堕ちする素敵小説ですよ、って誰か騙してアニメ化できないかしら。(一応嘘はついていない)個人的にはこのタイトルだけでご飯何倍でもいけるイカすタイトルだと思うのですが。ランダムアクツオブセンスレスヴァイオレンス!ランダムアクツオブセンスレスヴァイオレンス!今日もニュースをにぎわせる!『ザンジバーに立つ』では「アモック」と呼ばれ、今日では「むしゃくしゃしていた、だれでもよかった」と定型化される例のアレ。せめてこういう美しい/禍々しい言葉で呼んでやりたい。
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