今年のサマーシーズンは「メアリ」と「カーズ」以外に観たいものがまったくないのですが、ミニシアター系は粒ぞろい。
「ヒトラーへの285枚の葉書」もそのひとつ。
1940年、まだナチス・ドイツが破竹の進撃を続けていた頃、息子の戦死をきっかけに孤独な反体制運動を始めた、ある夫婦の物語。
運動と言っても、ただナチ政権批判(というより罵倒)のカードを書いて町のあちこちに置いてまわるだけなのですが、それだけでもあの当時、どれだけ危険で、そして勇気が必要であったことか。
想像するに難くありません。
ただ、ちょっと思ったんですが、もしあの夫婦の息子が戦死してなかったら、二人はどうしてたんでしょうね。
たぶん、いやきっと、消極的ながらもナチ政府に同調するか、少なくとも現状追認して日々を過ごしていたことでしょう。
戦場に身を置かない彼らが、息子を失うことで初めて「戦争」に出会った。戦争の当事者になった。
実際に災禍を被らなければ、戦争なんてずっと他人事。ちょっと生活は不便になるし、世の中がギスギスしたりするけれど、それもやがては「日常」になる。
大切なものを理不尽に奪われなければ、戦争の暴力性や、体制の醜さがわからないなんて、その方が私には怖いです。
もっとも、この日本ではそういう目にあってもなお「お国のため」というメンタリティに固執する風潮が今も蔓延してますが・・・。
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