蜜蜂と遠雷／恩田陸

　才能溢れる若きピアニストたちが鎬を削るコンクールを題材とした音楽小説。天才、素晴らしい演奏、とこう記すだけならタダだがそれを文章で表現するのは至難のワザ、それをこのページ数まったくダレず、恋愛沙汰だの殺人事件だのの不純物を一切交えず書き切ってしまうのはタダゴトではない。本選をこれくらいあっさり片づけてしまうなら、予選で切ってあとは読者の想像にゆだねてくれても、と思う向きもあるが、とにかく贅沢で幸福感と希望に満ちた終わり方で、更にはラフマニノフやバルトークが猛烈に聞きたくもなった。