村上春樹が「重要なことを伝えるには軽妙に言わないとだめだ」と言っていた。
つまり、物語を書く理由は、何かを特定の誰かにわかって欲しいからじゃない。
何かを、より多くの名もなき人達に伝えたいからだろ?ってことだ。
自分の素直な感情を直接的に出すことが出来る者と出来ない者がいる。
前者は後者に「もっと素直になれ」と言う。
後者は前者を、幸せなヤツだと思う(が、何も言わない)。だって、そんなことはわかっている。何度そうしようとしたか知れない。でも、人間の感情はそんなに単純じゃないから、出来ないんだよ、と思う。
むろんこれは後者の物語だ。
前者にはそもそも物語など必要ない、とまでは言わないが。
しかし、後者である主人公が、少なくともみかけ上社交的で適当に周囲に合わせて生きている(そのことがより彼を追い詰めてはいるが)のは、それすら出来ない僕などは、どうしたらいいのか?という、かなり身勝手な不満は残る(笑)。
とにかく、すばらしい物語だ。
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