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2017年03月08日17:18

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碧海寿広『入門 近代仏教思想』

 碧海寿広『入門 近代仏教思想』(ちくま新書、2016年)を読了。近代の仏教は廃仏毀釈や僧侶身分の解体などを経て、国民を教化する「宗教」としての自意識を強めた。一方でキリスト教の進出や西洋の哲学や科学の参入を前にし、宗教に留まらない新しい自己のあり方を求め、急速な変化を遂げた。
 そこでまず重視されたのが「哲学」で、井上円了は仏教を哲学として考え直し、その理論化を究めようとした。円了の後輩である清沢満之は哲学と信仰の狭間に身を置き、哲学の限界を意識しながら、なおも哲学を手放さなかった。清沢の後輩である近角常観は哲学に代わって仏教に活力をもたらすものとして「体験」を強調し、その価値は「伝統」に保証されていた。
 清沢に師事した暁烏敏は、近角と同じく体験に宗教の真価を認めたが、広範な読書で獲得した「教養」を武器にし、宗派の伝統に対抗する「私」の仏教を打ち出した。暁烏に萌芽が見られた仏教の教養化は、倉田百三の作品と思想でその本質を全面的に開花させ、倉田は特定の仏教に帰依せず、キリスト教とも自由自在に結び付いた。しかし、読書を通した学びは、国粋主義の隆盛する時代になると、日本の古典に甚だしく傾倒し、近代の仏教思想は戦争協力および敗戦という終焉を迎えた。
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