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2016年10月18日22:44

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彼の歌の示すところ/アン・レッキー

 はるこん短編集。

・へスぺリアに栄光あれ
「追放された火星の王子」を名乗る奇妙な男は、存在しない筈の我が家の地下井戸から失踪した…。件の人物が語る火星幻想にはSF者なら誰しも心惹かれてしまうだろう。それだけに、彼と語り手との二つの幻想のせめぎ合い、世界のあるべき姿を争う密やかな戦いに息を呑む。

・死者は葬れ
面倒くさい親戚づきあいの話、あるいは腐れ家長の追放。

・沼地の神々
本書のベスト。長編でも感じたことだが、アン・レッキーの書く登場人物たちの最大の魅力は、およそ考えられないほど非常識な状況に適応する、しなやかさとしたたかさを持ち合わせているところだ。この短編でも、望まない結婚、得体の知らない神々の争い、夫の死と別人となっての再生といった状況下で姉妹がそれぞれに対応する、果敢といっていい姿に心打たれる。

・彼の歌の示す処
恐竜宇宙SF!宇宙に進出した恐竜族が、地球を滅亡させた隕石落下を目にして、当初の計画どおり火星を目指すか、それとも地球に戻るかを決断せねばならない・・・というシチュエーションも面白すぎるが、その討論の方法が「歌」というのも実にユニーク。



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