津久井の事件を知り、無性に腹が立って、気がつくとこの作品を観てました。
小林正樹監督、仲代達矢主演の「いのち・ぼうにふろう」。
19人もの人を残忍に刺し殺した被疑者にはきっと、この作品に登場したアウトローたちの心根にあった「義侠心」など、かけらもなかったのでしょう。
自分勝手で自堕落で、ただ世を拗ねてワルの道に生きるしかなかった男たちが、惚れた女のために命まで賭けようとした非力な男の純情にほだされ、役人たちの仕掛けた罠だと知りつつも一世一代の大仕事に走り、命を落としていく物語。
ここに描かれた「弱さに対する想像力」「利他の精神」は、社会保障や福祉の世界にこそ必要なものであったはず。
かつて、事件現場となった施設で働いていたという被疑者。
彼がその成長過程で「いのち・ぼうにふろう」のような作品に触れ、人の世のあり方を真っ当に考えることのできる人格を育んでいたら、こんなことにはならなかったのではないか。
そう考えるのはあまりにも甘すぎるでしょうか。
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