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2015年08月04日21:16

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小谷信千代『真宗の往生論』

 小谷信千代『真宗の往生論 親鸞は「現世往生」を説いたか』(法蔵館、2015年)を読了。釈尊は現世で仏となり、彼を師と仰ぐ仏教教団は、現世で仏となる修道が主流だったが、多くの弟子たちは現世で仏となれず、来世に天界で仏となる修道が考え出された。原始仏教の修道は大乗仏教にも継承され、般若思想では現世の浄化を説き、浄土教では来世における浄土への往生が期せられた。
 浄土教は往生行の単純化・簡素化や般若思想の影響を受け、現世で即座に往生する教説が登場することになったが、天親はそのような往生思想を『浄土論』で批判した。しかし、般若思想に影響された曇鸞は、『浄土論』を注釈した『浄土論註』で現世に往生を認めた。親鸞は『浄土論註』で『浄土論』を理解し、信心を得れば即座に来世で往生することが定まるとした。
 真宗の江戸教学は自己の領解のみを重視することはせず、厳密かつ緻密な論考で親鸞が来世往生を説いたと講じた。だが、江戸教学を封建教学として切り捨てた近代教学は、実証的な考察を重視せず、文献の研究を軽視し、親鸞は現世往生を説いたと誤解した。近代教学はあらゆる仏典を用いて学問的に研究する近代仏教学にも偏見や暴言を浴びせている。
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