■宮下規久朗「<オールカラー版>美術の誘惑」2015年6月光文社新書
前読書日記、前々読書日記に続き、光文社新書、三連発です!
私は新書読みでもありますが、中でも好きなのが光文社新書。
光文社の本は、文庫も含めてあまり読みませんが、なぜか新書だけは
光文社のものをよく読みます。
切り口がとても新鮮で、私の知的興味と、新書編集部のセンスの相性が
抜群なのではと思っています。
前読書日記の「海外旅行ガイド」に続き、本書は、美術案内。ともに並みの
ガイド・案内ではなく、とても知的刺激を受けまくった。
帯や惹句などを紹介。
“ほんとうに大切なものは、
いつまでも生き続ける――。
美の原点に触れる、一期一会の物語
【カラー図版125点収録】”
“美術作品も、人と同じく一期一会で、
出会う時期というものがあるにちがいない。
私が病気の娘を案じているときに出会ったシャルダンも、
娘を供養すべく東北に見に行った供養絵額も、
娘の死後の絶望の中で見入った中国の山水画も、
みな出会うべきときに出会ったのだと思っている。
それらは、二度と同じ心境では見ることができないものだ。”
“ 美術は、単に優雅な趣味の対象ではなく、
社会や文化全般に強く関係する。
政治経済と深く関わり、生老病死を彩り、人の欲望や理想を反映する――。
西洋でも東洋でも、美術は歴史の局面で重要な役割を果たしてきた。
そんな美術の誘惑についての、一期一会の物語。”
全部で25話あるが、印象に残った話のタイトルを抜粋します。
プロローグ 美術館の中の男と女
第 1 話 亡き子を描く
第 2 話 供養絵額
第 4 話 夭折の天才
第 5 話 人生の階段
第 11 話 だまし絵
第 12 話 仮装
第 13 話 釜ヶ崎の表現意欲
第 14 話 刺青
第 15 話 一発屋の栄光
第 16 話 コレクター心理
第 17 話 自己顕示欲
第 18 話 ナルシシズム
第 23 話 三島由紀夫
第 24 話 琳派とプリミティヴィスム
第 25 話 白い喋
エピローグ 美術の誘惑
著者は、1963年生まれの美術史家で、神戸大学の先生。
単なる、退屈な美術の紹介の枠をはみ出しているのは、本書を書く動機が
22歳の一人娘を亡くし、悲嘆のドン底から、もう一度美術作品を観てみようと
思い立つ、切実かつ、私的な動機があったから。
その思いが、ピーンと張っていて、読むものの心に響くのです。
“美術作品も人と同じく一期一会で、出会う時期というものがあるにちがいない。”
“私はどんな作品も美術館も、これで見納めだと思って見ている。後に思い出せない
ような作品はすべて忘れてもよいのだ。”
“人でも作品でも、自分にとって本当に大事なものはつねに心に生起し続け、
いつまでも生きているはずである。”
125点の図版もきれいだし、全25話の話の切り口も面白い。
美術好きな方には、おすすめの一冊です♪
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