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2024年05月25日17:57

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読書日記N o.1618(90歳の筒井康隆さんの作品がリアルに読めること)

■筒井康隆「カーテンコール」2023年12月新潮社刊

半世紀前の二十歳前後の頃、私はツツイストだった時期があり、筒井康隆さんの主に
短編小説を、貪るように読んだ時期がありました。

筒井康隆さんは、日本SF界の草創期を、小松左京さんや、星新一さんと疾走した作家
ではありますが、SFの枠を超えて、スラップスティック、ナンセンス、ブラック
ギャグ、ドタバタの手法を積極的に取り入れ、時代の先端を文字通り疾走していました。

1960〜70年代、次々と刊行される、文庫本の短編集には、グルーブ感さえ漂って、私
は、ツツイストと名乗ることに、なんのためらいもありませんでした。

時代にとっての、旬、私の筒井体験においても、旬の時期だったと振り返って思います。

その後、筒井さんは大家になられて、断筆事件など、文学の枠を超えた社会的存在にも
なられましたが、私は、30代には読者として、卒業していました。

SF作家は、比較的短命の方も多く、小松さんや星さんも鬼籍に入られる中、筒井さんは
ご長命でいらっしゃいます。

今回、気が向いて、本書を読もうと思った次第です。

惹句を紹介します。

”巨匠の最後の挨拶(カーテンコール)は、25篇もの怒濤的傑作掌篇小説集! ”

”著者曰く「これがおそらくわが最後の作品集になるだろう」(編集者「信じていませ
ん!」)。「時をかける少女」「パプリカ」などの主人公たちが、病床の作者を訪れる
「プレイバック」をはじめ、巨匠がこれまで蓄積した技倆と思索の全てを注いだ、
痙攣的笑い、恐怖とドタバタ、胸えぐる感涙、いつかの夢のごとき抒情などが横溢する
圧倒的傑作掌篇小説集爆誕!」

所感としては、旬のキラキラ光る筒井康隆作品を知っているだけに、やはり、筒井さん
といえども、年には勝てないのでは、と思ったのが、正直な実感です。

それでも、往年の筒井康隆テイストや、匂い、風などは感じることができました。
同窓会の感慨、と言ってもいいかなと思います。

物事には、旬の時期があり、それは人間だれでも、記銘しておかねばなりませんですね。

ちょっと辛口の所感になってしまいましたが、でも。筒井康隆さんが作家として達成した
実績は、実績として屹立していますし、90歳を目前に控えて、まだ、小説を創造しよう
とされている、筒井康隆さんの姿に、ちょっと感動したりしています。
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