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2024年05月03日10:14

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帝銀事件 死刑囚

 現在オンエア中の朝ドラ「虎に翼」。
 第5週はヒロイン寅子の父・直言が巻き込まれた汚職事件を巡る法廷劇でした。
 ここで強烈な印象を残すのは、被疑者から自白を引き出すための検察官の強引かつ乱暴な取り調べ。少々証拠が希薄であろうと自白にさえ追い込んでしまえば無実であっても立件・起訴に持ち込めるという恐るべき構図に、身の毛がよだちます。
 先日観た「死刑台のメロディ」もそうでしたが、こういうの、過去の日本映画にもありましたね。「真昼の暗黒」とか「証人の椅子」とか。
 で、私が久々に引っ張り出したのが、これ。
 熊井啓監督のデビュー作「帝銀事件 死刑囚」であります。

 帝国銀行椎名町支店の行員など12名が毒殺されたこの事件の犯人として逮捕・起訴され、死刑判決を受けた平沢貞通がいかなるプロセスでそのような状況に追い込まれたかが描かれる後半は、ほぼ「虎に翼」第5週に合致するものがありますね。
 すごいのは、平沢に自白させた後。
 なにしろやってもいないことを事細かに話させるのですから、検察もタイヘンです。辻褄の合わないことを延々喋り、時々つっかえてしまう平沢に、検察官が「記憶を呼び覚ますためのヒントを与えてやろう」なんて言う件りはほとんどブラックジョーク。
 そんな出鱈目な自白に合わせるため、犯人が使った道具や犯行の状況が検察調書の中で事実とは全く違ったものに上書きされていくのも恐ろしいですが、それが公判で採用され証拠として認められてしまうというのもまた・・・。

 とにかく自白しちゃったのだから、後で否認しようとどうしようと、ひっくり返すことは容易でない。この当時運用されていた旧刑事訴訟法が自白中心主義であったために生じた不備としか言いようがありません。
 そしてその不備を、かつての検察は強引に利用していたのですね。
 「虎に翼」の検察官が法廷で「あなた、自白しましたよね!」と何度も繰り返すシーンがありますが、実際そうだったんだろうなと思わずにいられません。

 では現在はどうか、というと、さて・・・。
 今もって「人質司法」と呼ばれる長期勾留の問題も解決されませんし、起訴されれば有罪はほぼ99%と言う現実もそのまんま。死刑制度の存否についての議論も深まっているとは言えません。
 製作から60年経った作品ですが、本作の「日本の司法は、これでいいのか?」という問いは鮮烈なままですね。
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