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2023年11月28日13:21

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丸子宿「ART VISION」

静岡市の丸子は東海道20番目の宿で、昔から多くの文人等が往来した。
丸子は現在の静岡市の一番西端にある、その丸子の泉ヶ谷地区で芸術祭「静岡ART VISION」が開催されていると聞き、寄ってみた。

ここには、美しい山々に囲まれた穏やかな空間、観月に由緒ある寺、奥大井からもたらされた仏像、広重の浮世絵にも描かれたとろろ汁の店、みかん栽培から派生した養蜂場等々に加え、最近は「駿府の工房”匠宿”」が設置され、伝統工芸を見たり体験できるよう職人達が常駐している。
地域ではこれらを活かした街作りを進め、訪れた人達は、自然と歴史、美術・工芸と密接な里山の生活に接する事ができる。

「静岡ART VISION」のパンフレットによれば、丸子・泉ヶ谷地区には、昔と今、里山と街、自然と人の営み等様々な「境界」が存在する。人と人のつながりや豊かな想像力はその「境界」を柔らかに超越し、相反するもの同士も優しく接続されていくに違いない、と。
そうした唯一無二の場所に、6組の現代アーティストが集い、新たな視点でその魅力を多彩に表現し、アクセスゲートとして開放しようというのが、今回の芸術祭の狙いらしい。

順に紹介していこう。

なだらかな山々の懐に抱かれた「駿府の工房”匠宿”」。
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暖かい駿河の国に紅葉はまだ訪れない。
匠宿のホームページ。
https://takumishuku.jp/

Art Vision 01《自連車》(東弘一郎)
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匠宿エントランスに設置されている奇妙な自転車〜自連車。
子供達が歓んで乗っていたが、先頭の自転車に乗ってペダルを漕ぐと、8つのタイヤが連動して回転する仕組みになっている。
ペダルはいくら一生懸命漕いでも、確かにタイヤは回転しているのに何処に行く事もできない。
新型コロナ禍の人間のようでもある。

解題は用意されていないので、あくまで個人的な感想である。

中庭にあるモニュメント。これは元々あるもので「ART VISION」とは関係ない。
シカともうひとつは何かな?
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Art Vision 02《マグネット》(北川純)
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匠宿西角にある枯山水の石庭に設置されている。
古くからこの地に往来した人々。彼等を魅了し惹きつけた“磁力”の象徴か?

Art Vision 04《日常の温度〜夢幻の海底より》(タン・ルイ)
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クアラルンプール出身の美術家。
中庭の池に設置された、たくさんの洗濯バサミで作られた海底の未知の生物。
見慣れた素材とのギャップが面白い。

Art Vision 05《月の卵たち》(夏池篤)
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匠宿を出て、山里のなだらかな山道を東へ行くと、レストランSimplesの前庭にある。
このあとで紹介するが、丸子には観月の名刹「吐月峰(とげっぽう)柴屋寺(さいおくじ)」がある。“峰が吐きだした月”とはなんと詩的な表現だろう。
その寺に至る道沿いに、蔦の絡まる巣から今にも月になろうとする卵達がいてもおかしくない。

Art Vision 06《エターナル・アクション》(瀧健太郎)
昔使っていたミカン倉庫。
その中で映し出された映像には、地元の人々が延々と壁を這って上ったり下りたりしている(ように見える)。
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人々の交流と往来、自然環境、その留まらないサイクル。

ほんの少し東へ行くと、右手に柴屋寺がある。山号は天柱山(てんちゅうざん)。吐月峰の愛称で知られる。
その山門と本堂。
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島田出身の連歌師宗長が室町時代1504(永正元)年、ここに草庵を結んで閑居した。
当初は駿府今川館の外城としての役割を持っていた丸子城内にあり、柴屋軒と呼ばれたが、のち、今川氏親が堂宇を建て、柴屋寺となった。
江戸に幕府が開かれて、丸子城は廃城となったが、寺には徳川家康が朱印状を与えて護り、その後も整備修復させた。
庭は宗長が銀閣寺を模して禅味と詩魂を打ち込んで造ったもので、西にそびえる天柱山等を巧みに取り入れた借景庭園となった。
現在、国指定の史跡・名勝となっている。

本堂前の庭の景観。
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木々の間から東方遠方に極く小さく見えるのは通称”丸子富士”。

本堂の北の庭には小池があり、その周囲に設置した連石は北斗七星の形になっている。
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宗長は京等からも賓客を招いてしばしば観月の会を開催した。
池の奥には”月見石”があり、それに腰かけて月の出るのを待った由。
石のうしろには宗長とその師宗祇の墓があるとの事だったが、縁側からは見えなかった。
右手には家康”手向槙”。
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更に廊下を伝って奥に行くとそこにも小さな庭があり、背景に本寺の山号となった天柱山が空にくっきりと立っていた。
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他に、本堂内では、宗長が足利義政公から拝領した"文福茶釜"等、寺宝の類も何点か見る事ができた。

Art Vision 03《たなごころ・泉ヶ谷曼荼羅》(力五山)
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柴屋寺を出て小さな坂道を左手に入ると、千手観音堂がある。
境内には樹齢300年とも言われ、1982年に台風のために倒れたイチョウの幹が保存されている。地元の人々は「延命銀杏」と呼んで祀っている。

それを活かした3人組のアートユニット"力五山(リキゴーサン)"の作品。
幹のウロに木製の小さな橋を通し、ローラーを置いている。そこに横たわって誰かに紐を引いてもらえば、まるで病院のMRIのように中にスライドして入っていけるという訳だ。
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思うだに、「延命銀杏」の体内に横たわって入れば、この神木の生命力を全身に浴び、無病息災の願いにどれ程の効力があるだろう。
信じる人は救われる。

千手観音堂に安置された千手観音の背部には「後白河天皇守本尊 京三十三間住 運慶仏師作 建久六年三月十七日」とある由。建久六年は1192年。
その昔、故あって奥大井小猿郷より当所に移されたと伝えられる。
宗長の『宇津山記』に「奥に歓昌院あり 左の岨(*)に観音の霊像(云々)」と記しているとの事。
歴史が偲ばれる。この堂はこの山奥にある歓昌院の末寺であったのだろう。

(*)「岨(そ)」とは、険しい場所の意。

観音堂内の仄暗い奥、逗子中に金色に塗られた小さな千手観音が見えた。
丈はおそらく30cm程。
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歴史的・科学的な調査がされているのかどうか?果たして運慶作かどうか?

これで、Art Vision作品は全てである。
アーティスト紹介は以下一覧にて。
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LINEでスタンプラリーをしていたので、スマホの踏破証を匠宿前の店に見せたところ、泉ヶ谷にある養蜂場のハチミツチューブを貰う事ができた。
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ART VISION作品以外にも、丸子には訪れてみたいところがたくさんある。
それはまたの機会にと心に念じつつ、最後は匠宿内の「ときや」で蓬きんつばを食べて帰路についた。
 
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