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2023年08月25日22:55
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岡崎へ 〜 築山御前と信康の首塚
少し前になるが、思い立って愛知県岡崎市に車で出かけた。東名高速道路を使えば1時間余で着く。
行った訳は、徳川家康の正室 通称築山御前と嫡男 信康の首塚を見ようと思ったからだ。
築山殿の墓は浜松の西来院にあって、見にいった事がある。
以下レポート参照。
・2020年10/12「浜松市中心部からの散策〜家康ゆかりの3寺」
https:/
次はその続編に当たるレポートで、彼女が悲惨な最期を迎えた辺りを実際に歩いてみた。
・2020年10/31「佐鳴湖畔の散策〜築山御前の最期を想いつつ(改)」
https:/
信康の墓は浜松市天竜区二俣の信康山清瀧寺(しんこうざんせいりゅうじ)にあり、こちらも2度程行った事がある。
以下レポート参。但しこちらは個別テーマでなく、雑多な日記の一部としての記述だ。
・2018年12/1「11月の観た聴いた読んだ & その他」
https:/
・2020年6/10「百古里(すがり)へ蕎麦を食べに行く」
https:/
築山殿の2020年10/31付けレポートを書くに際して、ネット調査から、岡崎には二人の首塚があるという事を知り、写真を拾って貼付した。
その時から、いつかその首塚を実際に見てみたいと思っていたのだ。
折角行くならば、他にも確認したい事があった。
彼女(本名不祥、瀬名との説もある)が住んで、その通称となった築山は何処にあったのか？
現地にはそれを示す碑や案内板はないが、諸資料によると、近年公園化された中央緑道と総門通(旧東海道)の交差点にある岡崎康生郵便局(康生通南3丁目)に、その築山はあったとの事だ。(*1)
そして、同郵便局の南にはNTT西日本岡崎ビルが隣接している。(*2)
古くは岡崎康生郵便局の場所に「築山稲荷」、そしてNTT西日本岡崎ビルの場所に「総持尼寺(そうじにじ)」があったとされている。
(*1)
GoogleMapで見ると、岡崎城本丸から岡崎康生郵便局は東へ1〜1.2km、徒歩で14〜16分。
当時の城は、現在の岡崎公園より少し広かったが、それにしても築山稲荷は岡崎城城郭のかなり外にあった。
1590(天正18)年、豊臣秀吉によって家康が関東に移封されたあと、田中吉政が城主となり、岡崎城を大拡張、総堀(外堀)は築山稲荷と総持尼寺を内に取り込み、すぐ北に籠田総門が造られた。
↑家康時代の岡崎城城域と、吉政によって拡張された総構えの城域。
後者の東端にあるのが籠田総門。この南に築山稲荷があった。
家康時代の岡崎城と築山御前が住んだ場所の位置関係が分るだろう。
尚、オレンジの曲がりくねった線は旧東海道。「二十七曲り」と呼ばれた。以前は郊外を通っていた東海道を、籠田総門から城内に引き込んだ。
(*2)
北側から撮影した康生郵便局とNTT西日本岡崎ビル。
築山稲荷と総持尼寺の由緒によると、鎌倉時代1214(建保2)年、京都の宮中に毎夜妖怪が出て人々を悩ませた。本間三郎重光がこれを射ると妖怪は白狐だった。
その後順徳天皇が病に臥し、陰陽師によると白狐の祟りだと言う。
重光の所領三河の菅生郷(すごうごう/現岡崎市の中部・北部を包括していた地域)に日本60余州の名山の土を集めて山を築き、その頂に稲荷社を創建、傍らに寺を建てて、皇女が剃髪して祈れば治るとの仰せで、その通りに進められた。
これが築山稲荷と総持尼寺開基の伝えである。
その後、1296(永仁4)年、高家が寺領として寄進、伽藍を建立して一族の菩提寺とした。以降、地方豪族や京都の公卿の女が代々尼僧を務めた由。
桶狭間の戦いののち、1562(永禄5)年、鵜殿兄弟との人質交換で、家康の妻と嫡男信康他は駿府から解放。信康は岡崎城に入り、家康妻(信康母)も岡崎にやってきたが、対立する今川家の血を引くためか、岡崎城に入れる事ができず、築山稲荷のあった場所に庵を設けて住む事となった。
資料によっては、ここに「幽閉同然の生活を強いられていた」との表現も見られるが、史実と言えるかどうかは分からない。
それはともかく、この事から家康の妻は「築山御前」と呼ばれるようになったのである。
さて、遥か後年、1927(昭和2)年になって総持尼寺は築山稲荷と一緒に岡崎市中町小猿町の丘に引っ越しする事となった。
東へ1.6km、徒歩で21分程の遠くない場所だ。今回、ここにも行ってみた。
現在の総持寺本堂。曹洞宗、山号は瑞生山。1882(明治15)年以降は男僧が住持している由。
その左隣りに、真っ赤に塗り籠められた鳥居と祠がある。現在の築山稲荷だ。
さて、次は首塚である。
岡崎市内、両町2丁目にある浄土真宗の「祐傳寺(ゆうでんじ)」。浄土真宗、山号は根石山。
岡崎市役所の東240m、徒歩3分の街裏にある。
珍しい鐘楼を兼ねた楼門。
石柱の門を入るとすぐ本堂という小さな寺。
築山御前の首塚は、この石門を入ってすぐ左側に極く簡単な説明板があり、粗末なと言ってよい程の五輪塔形式である。
信康と築山御前の首は、安土城において信長が実検したあと、1579(天正7)年、岡崎城代だった石川数正が持ち帰り、本寺に後者の首を葬ったとの伝えが残る。
江戸時代に入って1646(正保3)年、この首塚は「八柱神社」に移された。
八柱神社は同市内、欠町石ヶ崎にある。祐傳寺から東へ1.5km、徒歩19分。
創建時期は鎌倉時代説もあるが不祥。
八柱神社の石鳥居から丘の上の本殿を見あげる。
拝殿。
境内には祭神を彫り込んだ石碑、この中に、他の神々に並べて「築山神明宮」/築山御前とある。
本殿西側の坂道を下ると、林の中にひっそりと築山御前の首塚と石碑が立っている。石碑によれば、1977(昭和52)年に改築したもののようだ。
八柱神社から祐傳寺方向に戻り、手前で南に折れると、乙川(矢作川支流、古くは菅生川とも呼ばれた)の手前、朝日町字森畔(あざもりぐろ)に「若宮八幡宮」がある。
こちらには、家康嫡男 信康の首塚がある。
本殿。
その右側に小さな廟が設えられていて、中に五輪塔形式の塚がある。
右の石柱に「岡崎三郎信康公御首塚」と彫られている。
元々ここは「菅生八幡宮」と言い、創建は古く、仁徳天皇を祀っていた。
『清水氏由緒書』によると、祐傳寺の項でも書いたが、信康と築山御前の首は、信長が実検(*3)後、1579(天正7)年岡崎へ差し戻された節、家康が密かに清水万五郎(万三郎？)に命じ、根石原(ねいしがはら)観音の森に信康の首を埋め、印に松を植えたとの事。これを「三郎松」と呼んだ。
その後、岡崎城内に種々の怪奇現象が起こり、人々は二人の祟りと考えた。岡崎城代だった石川数正は、翌1580(天正8)年、供養の首塚を建て、信康は「若宮八幡宮」、築山御前は、「築山神明宮」として祀った。
(*3)
本当に信長が首実検をしたかどうか、確証できる史料はない。
最近の史壇では、信長が二人の殺処分を家康に命じたという説自体弱くなっているようだ。命じてもいないのに、実検等するだろうか？
首塚を確認したあと、中央緑道に戻った。
緑道は南北に300mあり、乙川リバーフロント地区整備計画により、2015(平成27)年工事が始まり、2021(令和3)年に完成した。
緑道には徳川四天王の石像があちこちに設置されている。
乙川に近い南から紹介すると、まず本多忠勝(平八郎)。三方ヶ原の合戦の前哨戦である一言坂の戦いで殿(しんがり)を務めた場面。
酒井忠次。太鼓は三方ヶ原の合戦の伝説より。
榊原康政(小平太)。立て札は、小牧･長久手の戦い時に書いた檄文。寄せ集めの秀吉軍、その求心力を削いで内部分裂を狙った。右手には筆を持っている。
井伊直政。小牧･長久手の戦い時に初めて「赤備え」軍勢を率いた。
背景に見えるのがNTT西日本岡崎ビル。冒頭で紹介したように、当時は総持尼寺がここにあった。
行った訳は、徳川家康の正室 通称築山御前と嫡男 信康の首塚を見ようと思ったからだ。
築山殿の墓は浜松の西来院にあって、見にいった事がある。
以下レポート参照。
・2020年10/12「浜松市中心部からの散策〜家康ゆかりの3寺」
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次はその続編に当たるレポートで、彼女が悲惨な最期を迎えた辺りを実際に歩いてみた。
・2020年10/31「佐鳴湖畔の散策〜築山御前の最期を想いつつ(改)」
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信康の墓は浜松市天竜区二俣の信康山清瀧寺(しんこうざんせいりゅうじ)にあり、こちらも2度程行った事がある。
以下レポート参。但しこちらは個別テーマでなく、雑多な日記の一部としての記述だ。
・2018年12/1「11月の観た聴いた読んだ & その他」
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・2020年6/10「百古里(すがり)へ蕎麦を食べに行く」
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築山殿の2020年10/31付けレポートを書くに際して、ネット調査から、岡崎には二人の首塚があるという事を知り、写真を拾って貼付した。
その時から、いつかその首塚を実際に見てみたいと思っていたのだ。
折角行くならば、他にも確認したい事があった。
彼女(本名不祥、瀬名との説もある)が住んで、その通称となった築山は何処にあったのか？
現地にはそれを示す碑や案内板はないが、諸資料によると、近年公園化された中央緑道と総門通(旧東海道)の交差点にある岡崎康生郵便局(康生通南3丁目)に、その築山はあったとの事だ。(*1)
そして、同郵便局の南にはNTT西日本岡崎ビルが隣接している。(*2)
古くは岡崎康生郵便局の場所に「築山稲荷」、そしてNTT西日本岡崎ビルの場所に「総持尼寺(そうじにじ)」があったとされている。
(*1)
GoogleMapで見ると、岡崎城本丸から岡崎康生郵便局は東へ1〜1.2km、徒歩で14〜16分。
当時の城は、現在の岡崎公園より少し広かったが、それにしても築山稲荷は岡崎城城郭のかなり外にあった。
1590(天正18)年、豊臣秀吉によって家康が関東に移封されたあと、田中吉政が城主となり、岡崎城を大拡張、総堀(外堀)は築山稲荷と総持尼寺を内に取り込み、すぐ北に籠田総門が造られた。
↑家康時代の岡崎城城域と、吉政によって拡張された総構えの城域。
後者の東端にあるのが籠田総門。この南に築山稲荷があった。
家康時代の岡崎城と築山御前が住んだ場所の位置関係が分るだろう。
尚、オレンジの曲がりくねった線は旧東海道。「二十七曲り」と呼ばれた。以前は郊外を通っていた東海道を、籠田総門から城内に引き込んだ。
(*2)
北側から撮影した康生郵便局とNTT西日本岡崎ビル。
築山稲荷と総持尼寺の由緒によると、鎌倉時代1214(建保2)年、京都の宮中に毎夜妖怪が出て人々を悩ませた。本間三郎重光がこれを射ると妖怪は白狐だった。
その後順徳天皇が病に臥し、陰陽師によると白狐の祟りだと言う。
重光の所領三河の菅生郷(すごうごう/現岡崎市の中部・北部を包括していた地域)に日本60余州の名山の土を集めて山を築き、その頂に稲荷社を創建、傍らに寺を建てて、皇女が剃髪して祈れば治るとの仰せで、その通りに進められた。
これが築山稲荷と総持尼寺開基の伝えである。
その後、1296(永仁4)年、高家が寺領として寄進、伽藍を建立して一族の菩提寺とした。以降、地方豪族や京都の公卿の女が代々尼僧を務めた由。
桶狭間の戦いののち、1562(永禄5)年、鵜殿兄弟との人質交換で、家康の妻と嫡男信康他は駿府から解放。信康は岡崎城に入り、家康妻(信康母)も岡崎にやってきたが、対立する今川家の血を引くためか、岡崎城に入れる事ができず、築山稲荷のあった場所に庵を設けて住む事となった。
資料によっては、ここに「幽閉同然の生活を強いられていた」との表現も見られるが、史実と言えるかどうかは分からない。
それはともかく、この事から家康の妻は「築山御前」と呼ばれるようになったのである。
さて、遥か後年、1927(昭和2)年になって総持尼寺は築山稲荷と一緒に岡崎市中町小猿町の丘に引っ越しする事となった。
東へ1.6km、徒歩で21分程の遠くない場所だ。今回、ここにも行ってみた。
現在の総持寺本堂。曹洞宗、山号は瑞生山。1882(明治15)年以降は男僧が住持している由。
その左隣りに、真っ赤に塗り籠められた鳥居と祠がある。現在の築山稲荷だ。
さて、次は首塚である。
岡崎市内、両町2丁目にある浄土真宗の「祐傳寺(ゆうでんじ)」。浄土真宗、山号は根石山。
岡崎市役所の東240m、徒歩3分の街裏にある。
珍しい鐘楼を兼ねた楼門。
石柱の門を入るとすぐ本堂という小さな寺。
築山御前の首塚は、この石門を入ってすぐ左側に極く簡単な説明板があり、粗末なと言ってよい程の五輪塔形式である。
信康と築山御前の首は、安土城において信長が実検したあと、1579(天正7)年、岡崎城代だった石川数正が持ち帰り、本寺に後者の首を葬ったとの伝えが残る。
江戸時代に入って1646(正保3)年、この首塚は「八柱神社」に移された。
八柱神社は同市内、欠町石ヶ崎にある。祐傳寺から東へ1.5km、徒歩19分。
創建時期は鎌倉時代説もあるが不祥。
八柱神社の石鳥居から丘の上の本殿を見あげる。
拝殿。
境内には祭神を彫り込んだ石碑、この中に、他の神々に並べて「築山神明宮」/築山御前とある。
本殿西側の坂道を下ると、林の中にひっそりと築山御前の首塚と石碑が立っている。石碑によれば、1977(昭和52)年に改築したもののようだ。
八柱神社から祐傳寺方向に戻り、手前で南に折れると、乙川(矢作川支流、古くは菅生川とも呼ばれた)の手前、朝日町字森畔(あざもりぐろ)に「若宮八幡宮」がある。
こちらには、家康嫡男 信康の首塚がある。
本殿。
その右側に小さな廟が設えられていて、中に五輪塔形式の塚がある。
右の石柱に「岡崎三郎信康公御首塚」と彫られている。
元々ここは「菅生八幡宮」と言い、創建は古く、仁徳天皇を祀っていた。
『清水氏由緒書』によると、祐傳寺の項でも書いたが、信康と築山御前の首は、信長が実検(*3)後、1579(天正7)年岡崎へ差し戻された節、家康が密かに清水万五郎(万三郎？)に命じ、根石原(ねいしがはら)観音の森に信康の首を埋め、印に松を植えたとの事。これを「三郎松」と呼んだ。
その後、岡崎城内に種々の怪奇現象が起こり、人々は二人の祟りと考えた。岡崎城代だった石川数正は、翌1580(天正8)年、供養の首塚を建て、信康は「若宮八幡宮」、築山御前は、「築山神明宮」として祀った。
(*3)
本当に信長が首実検をしたかどうか、確証できる史料はない。
最近の史壇では、信長が二人の殺処分を家康に命じたという説自体弱くなっているようだ。命じてもいないのに、実検等するだろうか？
首塚を確認したあと、中央緑道に戻った。
緑道は南北に300mあり、乙川リバーフロント地区整備計画により、2015(平成27)年工事が始まり、2021(令和3)年に完成した。
緑道には徳川四天王の石像があちこちに設置されている。
乙川に近い南から紹介すると、まず本多忠勝(平八郎)。三方ヶ原の合戦の前哨戦である一言坂の戦いで殿(しんがり)を務めた場面。
酒井忠次。太鼓は三方ヶ原の合戦の伝説より。
榊原康政(小平太)。立て札は、小牧･長久手の戦い時に書いた檄文。寄せ集めの秀吉軍、その求心力を削いで内部分裂を狙った。右手には筆を持っている。
井伊直政。小牧･長久手の戦い時に初めて「赤備え」軍勢を率いた。
背景に見えるのがNTT西日本岡崎ビル。冒頭で紹介したように、当時は総持尼寺がここにあった。
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