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2020年12月04日15:54

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渡辺照宏『不動明王』

 渡辺照宏『不動明王』(岩波現代文庫、2013年)を読了。仏教は時代が下るに連れて堕落し、ヒンドゥー教の影響を受け、密教化して純粋さを失ったと論じられてきた。しかし、密教は仏教の外にあるヒンドゥー教の影響と見るべきではなく、仏教とヒンドゥー教は共に民衆の信仰形態を採用した。
 仏教は最初から倫理ではなくて宗教で、仏典における奇跡のごとき記事も後世の付加とのみは断定できず、元々は信者たちもブッダの超自然的な能力を信じていた。ブッダは民衆に社廟の礼拝を勧め、宗教家を敬えと教えた。出家教団にも蛇除けの呪文を始め、呪法の類いを承認した。
 ヒンドゥー教のシヴァ神が密教の不動明王になったという憶測も全くの誤りで、山岳の主という一点を除けば、殆ど共通点はない。仏教の仏・菩薩・明王をヒンドゥー教の神格と同一視するという考えは馬鹿げている。天部はバラモン教の神々を採用したものに違いないが、仏・菩薩・明王はいずれも仏教独自の諸尊だ。
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