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2018年11月06日21:59

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[観劇]小さなエイヨルフ/兵庫県立ピッコロ劇団

 @ピッコロシアター。足の不自由な子供の死をきっかけに、夫婦の間の不和が表面化し…イプセン原作の家庭劇。
舞台は二段構造になっていて、中央にひょうたん型に突き出した部分が、第一場ではアルメルス家の家屋として使用される。どこか不安定なその形状は、子供の死をきっかけに顕在化する、家庭内の不穏さを暗示するものか。人形を用いて演出される、「小さなエイヨルフ」の溺死以降の第2場では、家具という家具がすべて舞台上に宙づりにされるという演出が、この家庭に取り返しのつかないことが起こってしまったのだと示す。
 2時間休憩なしの芝居の間、剥き出しのエゴと愛憎が、フィヨルドのひしめきを背景に、ひたすらにぶつかり合う。主に夫の側の欺瞞が容赦なくえぐり出されていく、迫真の芝居は痛快でもあるが、些かの疲労感も覚えずにはいられない。もはや信じるべき神を失った人々の哀しさが、しかし結末で社会福祉への使命感によって解決される結末には、(登場人物の心境としては命がけの回心であったとしても)説法臭さがぬぐえず、この原作由来の問題点は、演出によってカバーして欲しかったと思う。開幕直後、後の事件を予兆する「鼠ばあさん」の不吉な訪れだけは、魔女めいた役者の演技と扮装も相まって、このどこまでも現代的で散文的な演劇のなかに、古ぶるしくも神話的な陰をなげかけていて、素晴らしい。それでいて、劇中唯一笑いの起きるパートでもあったことは記録しておきたい。
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