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2018年08月24日16:33

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メアリー・セットガスト『先史学者プラトン』

 メアリー・セットガスト『先史学者プラトン 紀元前一万年−五千年の神話と考古学』(山本貴光・吉川浩満訳、朝日出版社、2018年)を読了。古代のギリシアでは前十千年紀にジブラルタル海峡の内側で大戦争があり、前七千年紀にイランの伝説的な預言者ザラスシュトラが誕生したと語られていた。最近までの考古学はこれらの出来事が暗示する文化水準がその時代に達成できたはずがないと主張してきた。
 しかし、近年の先史時代研究は初期の人類を原始的と呼んで済ませるわけには行かないと教える。前十千年紀に初めて暴力で殺された犠牲者が埋葬され、都市の大規模な要塞化が生じ、戦闘場面の絵画や多くの鏃が作られた。この時期に地中海文化全域が激変するが、それは気候変動や人口過密だけでは説明できず、戦争があったことを示唆する。
 前七千年紀にはイランの辺境からメソポタミアや南東ヨーロッパへと定住と農耕が広まった。その農耕生活は採用したところで遊牧民や半遊牧民よりも経済的に有利となるわけではなく、経済以外の要因で拡大したと窺える。ザラスシュトラの信奉者たちにとって農耕によって定住生活に落ち着くことは宗教上の使命だった。
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