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2018年02月24日20:39

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小川洋子「完璧な病室」

今まであまりピンと来ない小説家だったので、買ったが読まないものがあり、その中の一冊。

人間にとって一部でしかない「社会生活」が、人生のすべてあるいは前提になってしまっているかのような、現代社会。
収入が人生を左右する、なければ生きて行けない、失格という烙印を押される資本主義社会。

文学はそこに意味を見いだせない者のためにある。
そのことを思い出させてくれる。
人生の行方なんて考えもしなかった頃、身近にあった感覚。
生活といううすのろを考えずに生きることは出来ない。
しかし、重要なのはそこじゃない。
多くの者は自分が正常だと思う。ほんとに?


完璧な病室
「このままひっそりと無機物のように清らかに生きていけたらいいのに。何も変わらず、何も変性せず、何も腐敗せず・・」

揚羽蝶が壊れる時
「あなた、わたしの中にも異常があるんです。世話してくれませんか」

冷めない紅茶
「何かが歪んでいるような気がした。時間や空気や距離や、そんな目に見えない何かが、どこかでねじれていた。しかしわたしにはどうしようもできなかった。わたし自身、そのねじれの渦にはまりこんでいた」

ダイヴィング・プール
「他にやりたいことが何も思い浮かばないの。自分では何も作らないし、汗もかかないし、疲れもしない。まるで恍惚の老人みたいでしょ」

そうだ、小説とはこういうものだったのだ。
逃避と言うなかれ。
社会生活に浸り込むことこそが逃避かもしれない。
そうだろ?
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