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2017年10月10日23:37

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テルリア/ウラジーミル・ソローキン

 中世的領邦国家群と化した未来のロシア、闊歩する小人に巨人、獣人…人々は望むままの世界を体験させてくれるという究極の麻薬=脳天に打ち込む魔法めいた釘「テルル」を求めて彷徨い歩く。テンプル騎士団の操る巨大ロボット兵団による新・十字軍や遺伝子操作で作り出された肉張型人間などとんでもないものが次々に繰り出されるが、これでも「いつも」のソローキンよりはエロ・グロにおいて控え目なのだ。物語の中核を貫く「テルル」は単なる麻薬ではなく、フョードロフ以来のロシア全人復活夢想を連想させる両義的なガジェットであるように、この50の断章によって描かれた世界、果たしておぞましき暗黒未来図として切って捨てるべきか否や、悩ましくも目くるめく。むしろ最終核戦争でなにもかもまったいらになった世界でモヒカンたちが楽しげにヒャッハーしてる、あのマンガ的な解放感かもしれないし、そういう転覆を経なければ我々はもはやまっすぐ真実を希求することさえできなくなっているのかもしれない。
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