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2016年12月27日23:26

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壁/安部公房

 ある日、目を覚ますと彼は名前を失っていた…という発端から、混迷の度合いは一切減ずることなく、奇想天外な彷徨が続いていく。胸の中の大砂漠に、動物園のラクダが彷徨い込み、その罪で裁判にかけられる―。自分の名前を奪った名刺を始め、ズボンが、メガネが自分に背き、思い人はマネキンと入れ替わる。
ただただ翻弄され、まごつくだけの彼の道行なのに、末尾のどこか突き抜けた爽やかさはなんなのだろう。

「見渡すかぎりの廣野です。その中でぼくは静かに果てしなく成長してゆく壁なのです。」
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