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2015年07月11日21:15

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バケモノの子

 サービス出勤で熱中症になりかかり、ちょっと具合が悪かったんですが、今日見逃したら次はたぶんないな、と思って、無理して観てきました。

 観てよかった、と思いました。

 細田守監督の前作「おおかみこどもの雨と雪」は正直な所、まったく乗れなかったのですが、今回はストライク。後半の展開にやや唐突さが見られるのが難ですが、魅力的なキャラクターとその関係性が面白く、とても気持ちがよかったですね。

 主人公の蓮という9歳の少年が、どうやら旧家の血を引く子供であるというのが興味深いです。
 旧家と言えば思い出されるのは細田監督の2009年作品「サマーウォーズ」。
 あの作品では真田家の家臣の子孫である人々が結束し、固い絆を武器にして人類の敵と戦う姿が描かれていましたが、本作では「しぶしぶ厄介者を引き取ることにした、プライドばかり高くて心の狭い人々」であることが強調されています。
 大家族だからといって、皆が仲がいいわけではない。
 「由緒正しい一族」も裏を返せば腹黒い人間の集まり。
 「サマーウォーズ」は世間では概ね好評でしたが、一部ではあの家族の描き方が不快だという声もありました。今回の作品がそれに応えたものであるかどうかはわかりませんが、あの世界観を根底からひっくり返すようなところから物語を始めたところに、私はある種の面白味を感じました。
 
 人間界と隣り合わせにあるバケモノの国・渋天街の住人である熊徹という粗暴な男が蓮を無理矢理に武術の弟子にするところから、本作は異界ファンタジーとして語られます。
 普通のお話ならこの二人の関係は子弟から疑似親子に発展していくというのが定石ですが、ここではそうはなりません。熊徹も蓮も完全に対等。これが実に面白いところです。
 何しろ、熊徹は教えるのがド下手。長島茂雄ばりに「バッ」だの「ビュッ」だのとやたらと擬音が多く、ちっとも具体的じゃないんですね。
 それもそのはず、彼は誰からも教えを受けず、独力で強くなった男なのです。
 そんな熊徹のダメ師匠ぶりに見切りをつけた蓮は、自らの目と耳で彼の「技」を会得する決心をします。ここで身につけた「学び」の術が、後半では別の方面で生かされることになるのですが、これは未見の方のため、伏せておきます。

 教わることに長けた者は、教えるのも上手。やがて蓮は熊徹に剣術を教わりつつ、戦いの場で役に立つ足さばきを教えるようになります。互いに師であり、同時に弟子であるという奇妙な関係は、やがて二人を無二の相棒にしていきます。親子ではなく、相棒に。
 本作の気持ち良さはたぶん、ここからきてるんじゃないかという気がしますね。べたついた愛情とか、暑苦しい友情とかでなく、技と心意気で結ばれた絆というのが、なんだかいいじゃありませんか。

 二人で一つ。最強の相棒。蓮と熊徹の、一種のプロフェッショナルな繋がりは、世の「男の子」の永遠の憧れなのであります。
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