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2015年03月23日20:26

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阿刀田高『新トロイア物語』

 阿刀田高『新トロイア物語』(講談社文庫、1997年)を読了。トロイア戦争の英雄アイネイアスが主人公の歴史小説。神話的な世界を描いたホメロスの『イリアス』および『オデュッセイア』とウェルギリウスの『アエネイス』を基にしているが、説明の合理化が行われている。
 まず作中に神々は登場しない。また、アエネイスは女神の子とされるが、それは身分の低い乳母の実子であるため、そのように偽られたと語られる。「トロイアの木馬」も無謀な作戦であると否定され、供犠の木馬が焼かれた後に起こった地震でトロイアの城壁が崩れたとされる。
 他にもトロイア人の言葉や信仰はギリシア人と違っていたであろうと捉えられている。合理的な説明をするための創作やテーマを効果的に表現するための伝承の改変も見受けられる。なお、作者はメソポタミアに発した文明が古代ローマからフランク王国、神聖ローマ帝国、フランス王国、大英帝国、アメリカ合衆国に西漸したと見るが、ビザンツ帝国やイスラム帝国を見事に無視している。
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