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日記一覧

「百年と一日」
2022年12月28日20:34

読書日記「百年と一日」柴崎友香 作(筑摩書房)年の流れとともに変わってゆく街や人々。様々な人生の長い長い移りゆきを集めた小品集。時代は次々と過ぎゆきて、あっという間に百年くらいは経つ。かと思えば過去へ過去へとさかのぼり、賑やかな街もかつては

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「止島(とめじま)」
2022年12月26日20:33

読書日記「止島(とめじま)」小川国夫 作講談社 2008年戦前から戦後の藤枝を舞台に、土地に生きる人々を描いた遺作短編集。全編ほとんどをセリフの連続のみで繋いでゆく。これが晩年の小川国夫の到達した表現なのか。地の文が少ないせいか語り手の私を含め

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「刑事と民事」
2022年12月25日20:48

読書日記「刑事と民事」元滎太一郎 著(幻冬舎新書)裁判における刑事と民事の違いから始まり、裁判と法制度のしくみを日常生活の事例をもとにわかりやすく解説。ニュースを見ていても告発や告訴、起訴、行政処分などの用語を始め、よく知らないことが

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読書日記「細胞の中の分子生物学」森 和俊 著(講談社ブルーバックス)遺伝子と細胞の基本的な仕組みをひとつひとつ丁寧に解説。そして著者が最前線を走る「小胞体ストレス対応」について研究秘話を含めてスリリングに語る。DNAの働きその他遺伝子のメカニズ

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読書日記「量子で読み解く生命・宇宙・時間」吉田伸夫 著(幻冬舎新書)不確定性原理や二重スリットなど、量子にまつわる不思議なイメージを一掃してほぼ常識的な解釈へと至る手引き書。私のような素人が素粒子まわりを紹介した科学読み物に触れると、必ずと

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読書日記「すべての月、すべての年」ルシア・ベルリン 作(講談社・岸本佐知子 訳)自由奔放に生きた作者の自伝的短編集第2弾。アルコール依存症をかかえ、看護師として勤務。そして様々な孤独な人たち。前短編集「掃除婦のための手引き書」と同じく苛烈な

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「死は存在しない」
2022年12月05日20:37

読書日記「死は存在しない」田坂広志 著(光文社新書)この宇宙で起きた全ての出来事が記録されている量子真空のゼロ・ポイント・フィールド。科学と宗教の違いを超えて意識と死の真相に迫る究極の一冊。この世界の目に見える物質も目に見えない意識も全て素

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「ティンカーズ」
2022年12月01日20:21

読書日記「ティンカーズ」ポール・ハーディング 作(白水社EXLIBRIS 小竹由美子 訳)リビングに設えられたベッドに横たわり、老いて今にも死を迎えようとする時計修理人の男。そしてラバの曳く荷台に日用雑貨品を詰めた棚を積んで売り歩いた父親。交互する

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「白光」
2022年11月25日20:21

読書日記「白光」富岡多恵子 作(新潮社・1988年)血の繋がらないもの同士でつくる家族。壮年女性と若き男性たちで山間にひっそりと暮らす。女や男の役割から自由に生きる試みの行方は…。語り手である島子と主催者のタマキは40代女性。そして同居する山比古

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「墓の話」
2022年11月22日20:23

読書日記「墓の話」高橋たか子 作(講談社)フランス各地で鄙びた墓所を訪ね歩いた、墓にまつわるドキュメントと創作5編。作者はたびたびフランスを訪れ、パリを拠点にかなり遠くまで古い教会や修道院を回っているので、本書もルポルタージュ作品かと思うと

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「湖の南」
2022年11月17日20:36

読書日記「湖の南」富岡多恵子 作(新潮社)明治24年(1891)巡査津田三蔵がロシア皇太子に切りつけた大津事件。津田三蔵とはどんな人間だったのか。時代に翻弄された一庶民のはかない生涯を追う。話は京阪電鉄浜大津駅となりの三井寺から始まる。琵琶湖疏水

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「わがままなやつら」
2022年11月14日20:18

読書日記「わがままなやつら」エイミー・ベンダー 作(角川書店・管啓次郎 訳 2008年)奇想であり荒唐無稽な出来事といかにも人間臭い女や男たち。稀有の作風で描かれる15の短編。異形の者が多い。たとえば頭がアイロンである子供や、9つの指が鍵になって

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読書日記「ここから世界が始まる」カポーティ 作(新潮文庫)若きカポーティが残した14篇の小品を収録。まだ10代の頃の習作から始まり、やがて秀作へ結実していく様子が手に取れる。カポーティ体験なしで読んでみたが、なんとなく大味なざっくりした感触で、

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読書日記「正岡子規ベースボール文集」(岩波文庫)まだまだ野球が珍しかった頃、その魅力にとりつかれ大いに運動した、まだ病を得る前の子規。その若く溌剌とした文章を編纂。「今やかの三つのベースに人満ちてそぞろに胸のうちさわぐかな」野球自体を題に撮

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「赤死病」
2022年11月04日20:33

読書日記「赤死病」ジャック・ロンドン 作(白水Uブックス・辻井栄滋 訳)2013年恐ろしき感染症によって壊滅した人類とその文明。そしてその60年後、わずかに残された人々は新たに人類の歴史を歩み始める。ジャック・ロンドンは静謐や内面といった要素の真

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「無限の玄/風下の朱」
2022年10月29日20:29

読書日記「無限の玄/風下の朱」古谷田奈月 作(ちくま文庫)男ばかりの家族・親族で構成されたブルーグラスバンド。或る日突然死んだ父親はその後も毎日現れては何度も死んでいく。とまどう息子たちの屈折がしだいに明かされていく。「無限の玄」:毎日蘇る

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「親衛隊の日」
2022年10月26日20:42

読書日記 「親衛隊士の日」 ウラジーミル・ソローキン 作(河出文庫)2028年、皇帝の支配する帝国ロシアで自由気ままに活動する陛下直属親衛隊の精鋭たち。その強奪と暴力と薬物に明け暮れた日々を活写。空想的幻惑小説。ソローキンは以前「青い脂」を途中ま

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「いい絵だな」
2022年10月20日20:32

読書日記「いい絵だな」伊野孝行×南伸坊(集英社)現役イラストレーター2人による自由でとらわれない絵の見方。力の抜けたスタンスで面白さを再発見。  やっぱり絵を描く人の分析はおもしろいな。絵画評論というと小難しいものが多く、最近は楽しい絵の見

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読書日記「女誡扇綺譚(じょかいせんきたん)」佐藤春夫 作(中公文庫)新鋭作家佐藤春夫が日本の同化政策下の台湾を周遊。植民地政策の欺瞞を見てとるルポルタージュと幻想譚を収録。巻頭表題作「女誡扇奇譚」これだけが純粋な空想小説で、他は巻末に「魔鳥

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「数学独習法」
2022年10月09日20:23

読書日記「数学独習法」冨島佑允 著(講談社現代新書)文系ビジネスマンのために代数学・幾何学・微積分学・統計学の4つの基礎を経済活動に寄り添って解説。自分はビジネスマンではないが、数学が苦手な文化系人間なので手に取ってみた。良い意味で夢の無い

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「貸本屋とマンガの棚」
2022年10月04日20:59

読書日記「貸本屋とマンガの棚」高野慎三 著(ちくま文庫)戦後1950年代から高度成長期が始まるまで、約15年の間に生まれて消えた貸本漫画。忘れられたその世界を当時の社会状況から解き明かす。マンガの歴史やマンガ界全般に興味が無く、マンガを研究するこ

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「独房・党生活者」
2022年10月01日20:07

読書日記「独房・党生活者」小林多喜二 作(岩波文庫)工場労働者の立場から身分を隠して生きる潜伏活動家へ。非合法共産党員の困難な日常を体験を持って描いたリアリズム小説。「党生活者」:日本労働運動史をまったく知らないわけでは無いが、やはり小説の

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読書日記「文と本と旅と」上林暁精選随筆集上林暁 著(中公文庫・山本善行編)上林暁の多年にわたるエッセイの中から「文・本・旅・酒・人」をテーマに厳選して収録した味わい深い一冊。「聖ヨハネ病院にて」周辺の数作しか読んだことは無いが、しみじみと心

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読書日記「むらさきのスカートの女」今村夏子 作(朝日文庫)職場でもプライベートでも「むらさきのスカートの女」の動向をひたすら追いかける語り手「黄色いカーディガンの女」。主客が混乱する不思議な味わいの異色作。こんなケッタイな小説読んだことなか

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読書日記「日本の近代化と民衆思想」安丸良夫 著(平凡社ライブラリー)梅岩、尊徳など近世通俗道徳から始まり、丸山教・大本教など明治期新興宗教に引き継がれた日本民衆思想。近世から近代へと民衆蜂起の思想的変遷までをたどった日本民衆史の記念碑的名著

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読書日記「古今奇談莠句冊(ひつじぐさ)」都賀庭鐘 作(江戸怪異綺想文芸大系 第二巻・国書刊行会 2001年刊)この巻「都賀庭鐘・伊丹椿園 集」のうち、伊丹椿園は読みやすいのだが、都賀庭鐘の「莠句冊」が晦渋で手に負えず、一度諦めていたが再挑戦した。

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読書日記「人間ぎらい」モリエール 作(新潮文庫・内藤濯 訳)貴族社会ではお定まりの外交辞令を否定し、誰に対しても本音で語ろうとする青年。方や憧れの未亡人は八方美人の冷徹な社交家。無謀な青年の恋の行く末は?色恋以外にすることのない有閑階級の誰

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読書日記「短くて恐ろしいフィルの時代」ジョージ・ソーンダーズ 作(河出文庫・岸本佐知子 訳)横暴な君主として国内を支配するに至った男フィル。国境を接する小国に対して残酷な侵害を開始するが…。すべてありえない国土とキャラクターで描かれた戯画的

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読書日記「ガルシア=マルケス中短篇傑作選」ガブリエル・ガルシア=マルケス(河出文庫)マジックリアリズム開眼以前のものも含めて、マルケス各短編集より代表作を抜粋。2019年に読んだちくま文庫「エレンディラ」と3作ほど作品がかぶるが、訳者も違うしあ

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読書日記「オブジェクタム/如何様」高山羽根子 作(朝日文庫)平凡なはずの日常世界に潜む過去からの謎。SF風味もあり。新鋭作家の初期短編集。「オブジェクタム」:現代小説で子供が主役となると、どうしても親含め周りの大人たちの役どころが定番なものに

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