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2022年12月01日20:21

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「ティンカーズ」

読書日記
「ティンカーズ」
ポール・ハーディング
 作
(白水社EXLIBRIS 小竹由美子 訳)

リビングに設えられたベッドに横たわり、老いて今にも死を迎えようとする時計修理人の男。そしてラバの曳く荷台に日用雑貨品を詰めた棚を積んで売り歩いた父親。交互するふたつの人生に行き交う思いと悲しみ。

息子ジョージと父親ハワード。二人の人生がなんども代わる代わるに語られる。ハワードの日用雑貨品の行商という仕事がそんなに大儲けできるわけもなく、長男ジョージを筆頭に4人の子供達を従えて、この結婚が失敗だったと思っている妻。ハワードは病気やケガがあったり、ふと森へでかけて帰らなかったり。彼らの人生は平凡なものだろうが、多くの思考や懊悩といったものはなくてただなんとなく続いていく気持ちというものが、ていねいに描かれるとこんなにも面白く、こころに沁み入るものなのかと感心する。

そして老いた息子ジョージは死の何時間前からカウントダウンされていく形で描かれ、ああ人が死ぬとはこんなものかという有様がリアルだ。

作者は書きたいシーンを好きに書いて、後で順序を考えて編集したという方法で仕上げたらしいが、これが良かったかも。
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