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2022年11月04日20:33

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「赤死病」

読書日記
「赤死病」
ジャック・ロンドン
 作
(白水Uブックス・辻井栄滋 訳)

2013年恐ろしき感染症によって壊滅した人類とその文明。そしてその60年後、わずかに残された人々は新たに人類の歴史を歩み始める。

ジャック・ロンドンは静謐や内面といった要素の真逆の、世界を股にかけた動きの大きい物語を描く作家。と言う印象だが、社会的視座をもって近未来を予測したSF的なものまで書いていたとは。

語り手は病魔をくぐり抜けて残された主人公が老人となった今(2073年)、新たに育つ子供達にいかにして過去の文明と繁栄が崩壊していったかを語る。この老人が少年たちにまったく信用されてなくて、嘘つき老人として馬鹿にされている設定が悲しい。

パンデミック後の社会では崩壊した身分関係の中から少しずつ新しい部族が成長し村を作っていくが、それはまたかつてと同じように暴力や戦争を含んだ人類史を繰り返すものである。といったペシミズムと諦念。
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