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2022年10月29日20:29

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「無限の玄/風下の朱」

読書日記
「無限の玄/風下の朱」
古谷田奈月
 作
(ちくま文庫)

男ばかりの家族・親族で構成されたブルーグラスバンド。或る日突然死んだ父親はその後も毎日現れては何度も死んでいく。とまどう息子たちの屈折がしだいに明かされていく。

「無限の玄」:毎日蘇る死者という突飛な出来事が起きているが、表現は真面目で引き締まった風格のある文学という印象だ。幼い頃から一丸となって旅から旅へのバンド活動。しかも男ばかりという特異な設定は、まるで小説のための実験室のようであり、集中して人間を解き明かしていくことができる。なんのために父親は甦るのか。実験は始まった。
もちろんなぜ彼がこうしたか、対してなぜ相手はどう言ったかなど、その想いのひとつひとつが私に分かるわけではないが、少しずつ崩壊していく彼らの繋がりを追いかけて目が離せない。

「風下の朱」:大学の女子野球部の話でこちらは女しか出てこない。健康ということに異常に執着して、野球でありながらチームより個人の資質を優先するキャプテンのためなかなか部員が集まらない。
グラウンドや用具含めて野球をしていることの描写に臨場感があり美しい。読んでる方も汗をかく思い。キャプテンの親和性のない性格が際立っていて、対立するソフトボール部のリーダーは正反対の丸い性格。そのせいもあって、短い話だがしっかりとドラマがありクライマックスがあって興奮する。
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