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日記一覧

「悪童日記」
2016年12月21日20:23

読書日記「悪童日記」アゴタ・クリストフ 作ついに読んだぞ、人気の「悪童日記」。子供を主人公にした話がなんとなく苦手で遠ざけていたが、こいつら(双子の主人公)頭が良くて大人以上にしたたかで、子供らしいピュアなところが全くなくてよかった。劣悪な

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「はるかな星」
2016年12月15日22:47

読書日記「はるかな星」ロベルト・ボラーニョ 作アジェンデ政権の時代。とある詩の創作サークルに不思議な男がやってきた。背が高く人当たりも良く、女子学生にもてていたが目の奥底には冷たい光。この男が後のピノチェト軍政下に名前を変えて、飛行機を操っ

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「傭兵隊長」
2016年12月12日21:43

読書日記「傭兵隊長」ジョルジュ・ペレック 作過去の有名画家に対する綿密な調査・研究のうえ贋作を製作、あたかも新たに発見された作品であるかのように装い、億単位の金を動かす贋作ビジネス。主人公ガスパールは若い頃から贋作作家として密かに成功をおさ

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「血の熱」
2016年12月07日20:24

読書日記「血の熱」イレーヌ・ネミロフスキー 作家業に精を出す夫を支え、子供達を育て、平凡な夫婦生活の中にも確かに愛があり、それこそ落ち着いたあるべき人生だが、それでも抑えきれない血の熱ともいうべき愛の形がある。母娘二代に渡って明かされる許さ

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「モスクワ妄想倶楽部」
2016年12月02日21:56

読書「モスクワ妄想倶楽部」A&B・ストルガツキイ 作ペレストロイカ以前ブレジネフ体制末期のソビエト文壇を舞台に、作者やその周りの文士達をモデルにした愉快なギョーカイ小説。当時の現役作家全員を統括する協議会(実はソビエト作家同盟)の命令により、

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「人形つくり」
2016年11月25日22:11

読書日記「人形つくり」サーバン 作森の中の全寮制女子校。つまらない毎日を送っていた生徒クレアは、敷地に隣接する古い屋敷に住む人形作りの青年ニールと知り合いになる。不思議なことに人形達は彼の魔法によって命あるもののごとく動き出すのだった。やが

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「テンペスト」
2016年11月17日21:32

読書日記「テンペスト」シェークスピア 作これだけ文庫本などでたくさん売られているからには、戯曲を読むというのも観劇とは独立した楽しみなのだろう。セリフだけを追っていくのはまるで漫画を読むようなものだ。しかもシェークスピアなどはリアリズムとは

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「黒縄」
2016年11月14日21:21

読書日記「黒縄」井上光晴 作1975年作品。刊行当時から知っていたが今になって読む。伊万里近くの土地で伝統の釜を引き継ぐ陶芸家の主人公。あと二日で自信の作品が焼き上がる頃、街で放火事件が起きる。犯人をめぐって噂が噂を呼び、主人公の家に同居する姉

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「二十一世紀前夜祭」
2016年11月12日20:47

読書日記「二十一世紀前夜祭」大西巨人 作2000年発行の短編小説及びエッセイ集大西巨人はまるで公文書のような大げさで堅苦しい表現をそのまま使うのが特徴だ。例えば「その『創刊の辞』的な短文について、大津は、どこが悪いのか、どこが連合国軍の占領政策

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「お供え」
2016年11月09日21:01

読書日記「お供え」吉田知子 作いつの間にか死んだ人と会話していたり、あれ?この人はもう死んだのではなかったの?と思っているうちに抜け出せない迷路をさまよっている。事の成り行きはたいがいうまくいかず、こちらの意思は通じず、行き着くところのない

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「草の上の朝食」
2016年11月04日21:03

読書日記「草の上の朝食」保坂和志 作著者初期作品。ほのぼのと平和で愉快な感触があって楽しい。男女数名の若いもんが同居していて、毎日近所一帯の猫にエサをやって回ったり、拾ってきたキーボードの練習をしたり、ダフ屋の手伝いをやってチケットをもらっ

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「ハイドラ」
2016年11月01日21:55

読書日記「ハイドラ」金原ひとみ 作やや昔の作品だが金原ひとみも読んでみた。ライターやカメラマンやスタイリストなど、クリエイティヴ業界の人間ばかり出てきて空々しい印象。女同士の会話も定番の絵に描いたようなセリフで、全体としてテレビドラマや漫画

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「迷宮」
2016年10月31日21:19

読書日記「迷宮」中村文則 作この作者のものを何か読んでおこうと思ったが、選択を間違えたか。ミステリー仕立ての短い作品であっという間に読めた。おぞましい一家殺人でしかも密室。ミステリーに詳しくはないがなかなかのトリックが用意されていて、その面

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「道化と王」
2016年10月28日20:55

読書日記「道化と王」ローズ・トレメイン 作解剖医のメリヴェルは陽気で派手好き、ちょっと下品だが誰とでも親しく交わる人間だ。国王チャールズ2世の愛犬を治療したことから王のお気に入りとなり、医学を捨て道化役として宮廷に出入りすることとなる。国王

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「黒い時計の旅」
2016年10月20日21:05

読書日記「黒い時計の旅」スティーブ・エリクソン 作ドイツが先の世界大戦を制しヒトラーが生き続けている世界。インディアンの血を引く屈強な大男で乱暴者の主人公だが意外にも筆がたち、ヒトラー1人のために小説を書き続けて報酬を得ている。しかも兄弟を

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「残酷な女たち」
2016年10月04日19:41

読書日記「残酷な女たち」ザッヘル・マゾッホ 作かの有名なマゾッホの短編。思いのほか面白い。別に官能小説ではなくちょっと愉快な空想篇といったものだが、出てくるのが往々にして毛皮を身にまとった猛烈に強い女。それを慕う男に若者は登場せず親父や爺さ

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読書日記「貸本マンガ史研究」第2期04 特集●水木しげる「総員玉砕せよ!」を反戦漫画の見本として知識人が評価してしまう現象を梶井純が批判している。しかし水木作品は基本的にエンターテイメントの方法で描かれており、芸術ではないのだからある種のパタ

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「水いらず」
2016年09月21日20:28

読書日記「水いらず」サルトル 作この短編集は若輩の頃読んだことがあったが、当時この面白さはわからなかった。人物が生き生きとしていて会話も楽しいし、地の文も興をそそる飽きさせない語り口。ストーリーもちょっぴりあって退屈しないように出来ている。

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「すばらしい新世界」
2016年09月09日20:10

読書日記「すばらしい新世界」オルダス・ハクスリー 作ディストピア小説の古典。表現としては単純な文体でマンガのような趣があり、最初はやや戸惑ったが読み進むにつれ気にならなくなった。ところどころ擬態語が混ざっていて、たとえば「どっかーん、どっか

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読書日記「ビルバオ-ニューヨーク-ビルバオ」キルメン・ウリベ 作スペインは北部バスク地方の言葉で書かれた小説。かつてバスク地方の叙事詩といったものもあまり無く、現在バスク語を話す人間はスペイン国内の3割くらいといった状況らしい。とはいってもこ

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「悲しみを聴く石」
2016年08月04日19:56

読書日記「悲しみを聴く石」アディーク・ラヒーミー 作戦禍のアフガニスタン。英雄として讃えられていた夫は、首に銃弾を撃ち込まれたまま植物人間と化して帰宅。妻の手によって毎日カテーテルから栄養を注ぎ込まれている。妻はコーランの教えにしたがって数

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読書日記「断片的なものの社会学」岸 政彦 著世の中全体とはなんだ?著者が社会学者であることを読んでいる我々が忘れてしまうほど、市井のただなかでモノを見る。学識豊富であることが壁(限界)になっていないという希有な才能かも知れない。例えば散歩中

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「天体による永遠」
2016年07月18日12:47

読書日記「天体による永遠」オーギュスト・ブランキ 著パリ・コミューンに至るフランス革命史をよく知らないし、稀代の革命家とされるブランキのことも全く知らないで読んだ。ブランキ晩年の獄中にて書かれた宇宙論。この著作が書かれた1871年の時点で宇宙に

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「雪の練習生」
2016年07月12日12:30

読書日記「雪の練習生」多和田葉子 作しろくま三代記。しろくま(ホッキョククマ)といっても人間と同様に暮らし、初代のクマはライターであり、サーカス時代からの自伝を書いてベストセラー作家となる。編集長はセイウチである。ソビエトから西ドイツへ亡命

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読書日記「ハインリヒ・ベル短篇集」ハインリヒ・ベル 作戦後ドイツ文学を代表するノーベル賞作家ベルの短篇集。自身の体験をもとに戦中・戦後の人々を描く。とは言ってもいわゆる重々しい戦争文学とは違い、アイデア豊富でオー・ヘンリーのような短篇らしい

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読書日記「死神とのインタビュー」ノサック 作戦後ドイツ文学。平易で読みやすいが幼稚でも通俗的でもない、美文ではないが文章を追う快感がある。訳文なので断定できないが名文なのかもしれない。死神が普通の職業人のように暮らしていたり、作者が自分でこ

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「自由について」
2016年06月12日13:22

読書日記「自由について」金子光晴 著実はほとんど触れたことがない金子光晴。それでも窮屈な戦前・戦後の日本社会を自由に生きた日本人の見本みたいなイメージは持っていた。確かにそうだ。その意味で著者独自のユニークな人生観・社会観を期待したが、この

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「三角帽子」
2016年06月01日09:09

読書日記「三角帽子」ペドロ・アントニオ・デ・アラルコン 作「三角帽子」:ファリャのバレエ音楽としても有名な19世紀のコメディ。粉屋(水車小屋)の美人女将に恋した市長。こいつがふだんから豪華な三角帽子を被り、鼬と呼ばれる手下の邏卒を従えて街を練

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「南十字星共和国」
2016年05月20日20:15

読書日記「南十字星共和国」ワレリイ・ブリューソフ 作20世紀初頭ロシア象徴主義運動の指導者ブリューソフの短編集。幻想文学といえばそうだが、幻想的なイメージ溢れるというほどの味わいはない。耽美で詩的な言葉に酔いしれるわけでもなく、不可解で理不尽

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読書日記「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」ジュノ・ディアス 作オスカーはぶくぶくと太った女の子にまるでモテないオタク青年だ。SFドラマやアニメに対する蘊蓄はふんだんにあり自分でも小説を書いている。現実の女性に対するアタックはことごとく撃沈の

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