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2022年10月18日20:37

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「女誡扇綺譚(じょかいせんきたん)」

読書日記
「女誡扇綺譚(じょかいせんきたん)」
佐藤春夫
 作
(中公文庫)

新鋭作家佐藤春夫が日本の同化政策下の台湾を周遊。植民地政策の欺瞞を見てとるルポルタージュと幻想譚を収録。

巻頭表題作「女誡扇奇譚」これだけが純粋な空想小説で、他は巻末に「魔鳥」がある他はほぼ旅行記である。廃屋で聞いた謎の声にまつわるミステリー仕立ての佳作で、読み始めるやいなや佐藤春夫の飾り気のある文章に魅了された。やはりこの夢見心地が佐藤を味わう醍醐味であろう。

当時佐藤春夫は新鋭作家として大いに名声を得ていたようだが、この台湾旅行中もまるで国賓扱いのもてなしぶりで、支配国の詩人などというものがそんなに偉いのか不思議な気がする。
旅行記の一つに「植民地の旅」というタイトルがあるとおり、佐藤自身は友人である台湾人と対等に付き合っても、その実台湾社会は内地人(日本人)・本島人(漢民族)・蕃人(先住民)の順にれっきとした差別構造がつらぬかれていることはいやでもわかるというもの。旅行記自体はのんきなものだが、そこはリアルだった。
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