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2022年09月21日20:38

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「むらさきのスカートの女」

読書日記
「むらさきのスカートの女」
今村夏子
 作
(朝日文庫)

職場でもプライベートでも「むらさきのスカートの女」の動向をひたすら追いかける語り手「黄色いカーディガンの女」。主客が混乱する不思議な味わいの異色作。

こんなケッタイな小説読んだことなかった。しかも芥川賞。
語り手はなぜか近所に住む「むらさきのスカートの女」を異常なまでにつけまわし、求人情報まで密かに与えてまんまと同じ職場に誘い込む。そうやって「むらさきのスカートの女」の仕事ぶりや同僚との会話を見ていると、彼女はあんがいまともな普通の人間であることがわかる。それよりも逆にこの女をつけまわしている語り手(黄色いカーディガンの女)のほうがずっと常識はずれの人間であることがしだいにわかってくる。

「むらさきのスカートの女」の秘密を期待して読んでいた読者の興味は変わって語り手の女の異常性に向かい、どれだけ執拗なストーカー行為をするかに注目してしまう。
しかもこの作品は、まるで作家の語り手目線であるように書かれているが、同じ職場にいる人間(黄色いカーディガンの女)が語っている設定なのだ。常に「むらさきのスカートの女」と同行していてこそわかる描写ばかりなので実際にはありえない。これが小説としてかなり奇妙な効果を生んでいて、主客があるような無いような得体の知れない作品が成立した。

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