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2022年09月26日20:38

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「文と本と旅と」上林暁精選随筆集

読書日記
「文と本と旅と」上林暁精選随筆集
上林暁
 著
(中公文庫・山本善行編)

上林暁の多年にわたるエッセイの中から「文・本・旅・酒・人」をテーマに厳選して収録した味わい深い一冊。

「聖ヨハネ病院にて」周辺の数作しか読んだことは無いが、しみじみと心に残る私小説を残した上林暁。こうして随筆の数々を読んでみると、きわめて良識のある普通の人だとの印象がある。私小説家というと破滅型や自己憐憫の強い人間をふと思い浮かべるが、そんなタイプばかりでもないのは当然のこと。

したがって古書蒐集や旅の思い出など読んでいても、あまりにも普通に納得できる話ばかりで意外な面白さは無いが、それでもするすると読んでしまって心が満たされた感覚があるのは、ひとえに文章がうまいからなのかな。

ただやはり「人」をテーマに井伏鱒二や川端康成・宇野浩二など作家連との交流を描いたものは、普通には体験できないエピソードばかりなのでミーハー的な興味もあっておもしろい。作家がホテル住まいで創作に励んだり、随分リッチなものだなと思ったが、正宗白鳥会見記によると文壇が隆盛したのは菊池寛以降で、それまではみんな貧乏だったとのこと。
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