偶像崇拝

ドラッグの話に関連して、ちょっとした疑問、というか憤りを投げかけたくなってきた。
雰囲気からして、かなり長文になる予定です（笑）

なぜ芸能界やマスコミは、普通のタレントならともかく、アーティストと呼ばれる人たちにまで品行方正な振る舞いを求めるのだろうか。
音楽家であれば、作品のみで評価するのが筋ではなかろうか。

たとえば槇原敬之が覚醒剤で捕まった時、彼の作品があっという間に店頭から消え去ったことを思い出す。僕は特別マッキーのファンではなかったが、あれには薄気味悪いものを感じずにはいられなかった。
ほかにもバンドで不祥事を起こしてクビになったメンバーがいたとして。テレビで過去のＶＴＲを流す際は、その人が映らないようしっかり見切れてたりする。しかもそのことには一切触れないことがテレビ的な暗黙の了解になってしまってる。
あれは日本特有の文化なのか、僕にはひとつ分からないのですが。
よく考えると、存在そのものをなかったことにされる、というのは一般人から見ても恐ろしいことですよね。

こういうメディア側だけではなく、それまでファンを自称していた人たちの掌を返したかのような極端な反応にも、同様に恐さを感じる。
たとえば、ピュアなラブ・ソングをウリにしてた大好きなシンガー・ソングライターが、実は変態的な性癖の持ち主で、日常的に女性に暴力を振るっていたとしよう。（意外とありえますよね）事件が発覚したとき、あなたならどう思うだろう。「そんな人間に純なラブ・ソングを歌われても説得力がない」という意見も、もちろん心情としては理解できる。しかしながら、それまで変態の歌に感動していた自分の心については、どう説明すべきだろう。あれは嘘か、幻か。あるいは詐欺まがいの商法にまんまと騙されていたに過ぎないのか。それとも作者が逮捕された瞬間に、音楽の魔法が解けてしまったとでもいうのか。

僕は音楽作品とそれを作った人間は、厳格に区別されるべきだと思っている。そう、歌い手が自分の気持ちを作品に投影しなきゃいけないなんて決まりは一切ない。
僕は仮にアーティストが快楽殺人者だったとしても、糾弾すべきは作品ではなく、その作者の人間性のみに言及すべきだと思う。
それに困ったことに、芸術の世界では最低な人間が最高に美しいものを生み出してしまうという矛盾が、往々にして起こりえてしまうのだ。モーツァルトやベートーヴェンの例を挙げるまでもなく、優れた音楽家はなぜか私生活で問題を抱えている人たちが多い。それどころか、まともな日常生活を送れない社会不適合者のような人たちも少なくはない。

それでも一般的な意味合いにおいて、作者と作品のパーソナリティーを混同したり、作者を崇拝して同化したり、そうはいかないまでも、単純に憧れを抱いてしまうのは、ことさらポップ・ミュージックの世界では必要不可避な現象と言えるかもしれない。アイドルの世界はそれだけで成り立っているようなものだし、カリスマ性のあるアーティストであれば、少なからずそれと似たような現象が起こっていると考える方が、むしろ自然だ。僕だって優れた音楽作品に出合った時は、それを生み出すに至った経緯を知りたくなり、作者の生い立ちやバックグラウンドなど、付随した情報まで調べてしまう癖がある。（作品の理解にも役立つ）

ただし必要以上に作者に感情移入し、そこに勝手な幻想を抱いてしまうと、音楽そのものの素晴らしさはどんどん遠いところに言って見えなくなってしまう気がする。それは音楽への純粋な理解を拒む、忌むべき行為であると僕は考える。

なので僕は、アーティストとは常に一定の距離を保つようにしてます。
アーティストは曲を作り、それをリスナーが各々のかたちで受け止める。
アーティストがどんなに神格化されていても、逆にどんなに身近に感じる存在でも、このシンプルな構図は変わらない、という認識。それ以上でも、以下でもない。
レストランに行ったとき、いちいちシェフの人柄を気にしますか？ということです。

いささか夢の無い話をしましたが、こういう少しばかりドライな姿勢というのは、音楽作品を平等に深く楽しむ上で、意外に重要なポイントではないかと思ったりもします。
したがって僕は、大好きなアーティストでも、レヴューでこき下ろしたり、ひどい時には馬鹿にしてたりしますが、これは誹謗中傷と捉えないでほしい。僕なりのひねくれた愛情表現なので。
長々と話してしまいましたが、言いたいことはつまりそういうことです。
基本的にここで挙げる人たちに嫌いなアーティストはいません。