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2008年10月22日23:04

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静岡文芸大室内楽演奏会「ロマン派のミューズ」

10/20-21(月-火)、静岡文化芸術大学主催の室内楽演奏会が、地元浜松市を出て、名古屋市と静岡市で開かれた。
その内、21日、静岡市で行われた方、macchaさんとご一緒させて頂き、聴いてきた。
2006年来、歴史的鍵盤楽器を使用し、アーチスト(小倉貴久子を中心に)と博物館(浜松楽器博物館)と大学(静岡文芸大)音楽史研究グループが連携して、何回かこのシリーズの演奏会を行ってきたが、静岡市と名古屋市に出たのは初めてである。これ迄は地元と東京。

今回のメンバーは、以下である。

フォルテピアノ 小倉貴久子
ヴァイオリン 桐山建志
チェロ 花崎薫

フォルテピアノは、今回は浜松楽器博物館所蔵品ではなく、小倉個人が自宅に持っている楽器だとの事。1845年、J・B・シュトライヒャー作。ウィーン・アクション。

プラスで、星野宏美のプレトークが付いた。
星野は立教大の准教授、またベルリン工科大音楽学研究所研究員で、メンデルスゾーンの研究を深め、特に自筆譜の調査検証で国際的な評価を得ている人だとの事。

今回の演奏会は「ロマン派のミューズ」と副題が付され、メンデルスゾーンの各曲が選ばれた。

1.ヴァイオリンとピアノの為のソナタ へ短調op.4
2.チェロとピアノの為のソナタ第2番 二長調op.58
3.ロンドカプリチオーソ ホ長調op.14
4.ピアノ3重奏曲第1番 二短調op.49

1.2.はタイトルの通りの楽器組み合わせ、3.はフォルテピアノのソロ、そして、最後がピアノ3重奏だから全員のアンサンブル、となっていて、それぞれの組み合わせをフルに味わえる興味深い内容になっていた。
またメンデルスゾーン(1809-1847)の作曲時期としても、順に、14歳、34歳、21歳、30歳と生涯(38年)をカバーしていて、この点でも旨いプログラムになっていた。

言い忘れたが、ヴァイオリンとチェロも個人の物のようだった。本体の形態は古典に入ってから(1800年代か?)の物で現代のものと大きくは変わらない。弓は1700年代,1800年代製、現代の物とはサイズも材質も違うが、演奏スタイルはバロックのそれではない。弦は高音がガット(羊の腸)、低音はガットに金属を巻いた物。
花崎が面白い事を言っていた。
・・・演奏者よりも楽器はずっと命が長い。偶々ある楽器と出会ってそれを管理・調整・演奏しているが、私達には、それを後代の人にいい状態で引き継ぐ責務がある、と。
ストラディヴァリウスと言わなくとも、考えてみれば、ハードにしろソフトにしろ、文化というのは、そうやってバトンを渡されていくものだ。あだや疎かにはできない。
重みのある言葉だった。

桐山は1999年ブルージュ国際古楽コンクール、ソロ部門第1位の経歴、現在はオーケストラ・シンポシオンのコンサートマスター他、数多くの室内楽グループのメンバーで、愛知県立芸大准教授でもある。
花崎は、東京芸大在学中に安宅賞、ドイツ留学後エルデーディ弦楽四重奏団結成、現在は新日フィルチェロ首席でもある。

プログラムに沿って、少しばかり感想を。

1.は急(アダージョ序奏付き)・緩・急の3楽章ソナタ。14歳の若書きだが、見事な均整美、いかにも大人を背伸びしたようなお洒落が施されている。

2.は急・急(スケルツァンド)・緩・急の4楽章ソナタ。既に晩年の作品と言うべきだが、情熱の迸りは、1.より真っ直ぐな感じ、花崎の溢れるような躍動もあって感動!。

3.は有名なピアノ佳品。緩やかな序奏プラス急の2部構成。ロンドテーマがカプリッチョ風に飾られ繰り返される。

4.は星野によれば、”メントレ”ならぬ”メントリ”(メンデルスゾーンのトリオ)と愛称される由、シューマンが当時「現代ピアノ・トリオの傑作」と評したとの事だが、室内楽史上の名作とさえ呼ぶべき名曲である、と。
メンデルスゾーンの自筆譜にはメトロノーム記号が明記されており、この第3楽章スケルツォ(レジェーロ・エ・ヴィヴァーチェ)等は、とんでもなく早いスピードで弾かなければならない。現代のピアノアクションの重量では無理があって、時流は専らメロディを歌わせる事に逸れていったが、当時のフォルテピアノのタッチの軽さならばそれも可能であるとの事、これも星野のプレトークから。
確かに、3人の息の合った演奏は、con fuoco (コン・フォーコ=火のような)と修辞を付けたくなるような感じだった。
また第1楽章のモルト・アレグロ・エド・アジタートは、弦楽器に比しピアノの音の数が多過ぎて、現代ピアノで弾かれるとバランスが悪く、ピアノがうるさい感じになるらしいが、フォルテピアノとのアンサンブルでは、実に良いバランスで競い合った。第2楽章はアンダンテ・コン・モルト・トランクィロ、無言歌風の歌謡楽章。
第4楽章フィナーレはアレグロ・アッサイ・アパッショナート、二長調になって明るく華やかに盛り上げ、全曲を気持ち好く閉じる。

アンコールは同じ”メントリ”の第2番ハ短調op.66からスケルツォ。

メンデルスゾーンは個人的にはあまり聴かない作曲家だが、その天才的な音楽作りが、今回のアンサンブルでは手に取るように見えて、知的興味に溢れ、且つ実に心地好い演奏会だった。
 
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