大貴<ダイキ>(安田章大)は、自閉スペクトラム症だが、グループホームを出て、独り暮らし。清掃の仕事をしている。
歩くとき、まっすぐに歩き、曲がる時も直角に曲がらないと気が済まない。
清掃の仕事も丁寧だけど、ちょっとモノがズレたりして、まっすぐになっていないと、何度でも並び替えてしまう。周囲は、困惑しながらもそんな大貴を見守り、大貴も仕事に生きがいを持っているようだった。
希<のぞみ>(のん)は、大貴の妹。カウンセラーの仕事をしているが、付き合っている雅也(伊島空)から、仕事の帰り道、唐突にプロポーズされる。
「こんなところで言う話、ちゃうやろ?」と怒りつつ、希は嬉しさを隠せない。
雅也は、大貴の性格やこだわりを知っているが、今度、東京の両親に希と大貴を会わせたい、という。
希は不安を覚える。障害のある兄のことを受け入れてもらえるか、そして兄はトラブルなく、大阪から東京まで行けるのか。
彼女は、今まで大貴のことを支えながら生きてきたのだった。
希が幼い頃、父親は女性問題でしょっちゅう家を空け、障害のある息子の育児と、夫の浮気に苦悩した母(谷村美月)は、心労で急死してしまった。
父親とは疎遠になっているが、焼き肉屋で大貴と希を前に「今度再再婚する」と父親に聞かされ、希はあきれかえる。
グループホームで大貴の面倒をよく見てくれる、父の幼なじみの先生のほうを、希はずっと頼りにしていた。
大貴は不安があったり、いつもと違う思わぬことがあると、口にして説明できずにパニックを起こしてしまう。
職場の飲み会に無理やり連れだされ、騒ぎになったときも、警察沙汰になってしまった。
なんとか大貴を連れて東京の雅也の家を訪問した希。
雅也の父(菅原大吉)と母(神野三鈴)も暖かく迎えてくれた。
だが、食事会の際、大貴は、雅也の母の服の模様が気になって仕方なく、つい触ろうとしてしまう。衝撃を受ける母。その彼女の頬を撫でる大貴。
希は、大貴が危害を加えようとしたのではないことを訴え「大貴は嬉しいことがあると、相手の人のほっぺたを、撫でるくせがあるんです」と説明するが・・
そのあと、川のほとりの遊歩道をとぼとぼと歩く希。いっしょの大貴を見ながらいろんな思いがあふれ、つい、彼にぶつけてしまう。
大貴のことを「お荷物だ!」なんて自分は思い続けていたのでは? と自己嫌悪に陥る希だった・・
少し気温が下がったので思い切って久しぶりに行った映画館。
いわゆる「きょうだい児」の希の苦悩、自閉スペクトラムの大貴の言動、彼を「親族」とすることへの雅也の母の葛藤など、きれいごとだけでなく、丁寧にキャラ設定されて描かれていたと思う。
希がつい、大貴に対して「これ以上、わたしの人生を邪魔せんといて!」と叫んでしまうシーンや、雅也の母の「決して、大貴君を差別してるわけじゃないのよ・・」という言い訳などは、リアルな心情だったと思う。
のんは、ホントにますます「透明感ある俳優」になってて、彼女は兵庫県出身なので関西弁も違和感なかった。
希が涙ながらに思いを吐露するシーンや、ラストシーン(やっぱりハッピーエンドでよかった)などでは、映画館のあちこちからすすり泣きが聞こえてきた。
いろんなことがあっても、家族に問題があっても、みな幸せに生きて行ってほしい。幸せになるために生まれてきたんだから。そんな思いがする映画だった。
(9月3日、T・ジョイ博多)
ログインしてコメントを確認・投稿する