ストロング小林さん追悼(686)

全日本プロレスとの興行戦争ですが、全日本プロレスは新日本プロレスの「闘魂シリーズ」開幕戦の10月10日、後楽園ホールより１日前の10月９日、同じ後楽園ホールで秋の陣「ジャイアント・シリーズ」
が開幕しています。

参加外国人レスラーはアブドーラ・ザ・ブッチャー、ワフー・マクダニエル、キラー・トーア・カマタ、ビッグ・ジョン・スタッド、ジ・アベンジャー(ムース・モロウスキー)、ジ・アステロイド(スコット・アーウィン)、ミスター・フジがシリーズ全戦参加。

前半戦特別参加がビル・ロビンソン、後半戦特別参加がテリー・ファンク、ディック・マードック。

日本側はタイガー戸口、石川隆士が先シリーズ中盤から西ドイツのハノーバー・トーナメント参加の為不在、カナダ・カルガリーで暴れていたミスター桜田(桜田一男)が凱旋帰国して参戦しています。

また、大仁田厚､園田一治についで淵(渕)正信も海外遠征に出発、プリンス・トンガも遠征に出ました。ロッキー羽田は内臓疾患の為、急拠欠場となり、日本勢が手薄となった為、馬場は、フジを日本側に組み入れる苦肉のマッチメイクを強いられました。

開幕戦10月９日後楽園ホール(テレビ収録、観衆2,300人発表)大会。メインイベントで桜田は馬場とタッグでブッチャー＆カマタ組と対戦、１本目は桜田がカマタをセカンドロープからのフライング・ニードロップから体固め、２本目はカマタが桜田をダイビング・ボディプレスから体固め、決勝の３本目は両チーム反則となり１−１で引き分け。

10月13日､愛知県体育館(テレビ収録、観衆4,500人発表)大会ではダブルメインイベントとして２大タイトルマッチが組まれました。ダブルメイン第２試合は鶴田にブッチャーが挑戦したＵＮヘビー級選手権試合。

１本目は鶴田がコーナーポスト最上段からのダイビング・ニーパットから体固め、２本目はブッチャーがジャンピング・エルボードロップから体固め、決勝の３本目はブッチャーが仰向けの鶴田をアルゼンチン・バックブリーカーの要領で肩に担ぎ上げ、そのまま後方に倒れ込む新兵器のバックフリップ「山嵐」から体固めを決めて２−１でベルト移動。ブッチャーが新王者になりました。

鶴田は３度目の防衛に失敗､この年２月23日、鹿児島県立体育館でマードックにもベルトを明け渡しており、１年で２回、ＵＮヘビー級王座から転落しています。

ブッチャーは75年のＰＷＦ認定ＵＳヘビー級王座、78年のＰＷＦヘビー級王座、前79年のインターナショナル・タッグ王座(パートナーはレイ・キャンディ)にて続いての戴冠となり、時期は全て「ジャイアント・シリーズ」。

当時国際プロレスで大木金太郎が防衛戦をしていたインターナショナル・ヘビー級王座、馬場が封印していたアジア・ヘビー級王座、中堅ベルトのアジア・タッグ王座を除く全タイトルを総ナメにし、春のチャンピオン・カーニバル２回優勝を合わせて、「世界最強タッグ決定リーグ戦」優勝を除くグランドスラムを達成しました。

逆に言えば、最強タッグのパートナー､ザ・シークと仲間割れしたことで優勝も望み薄となり、全日本プロレスのリングではこれ以上やることがなくなってしまった、ということになる訳です。

ダブルメイン第１試合は馬場にロビンソンが挑戦したＰＷＦヘビー級選手権試合、１本目はロビンソンがワンハンド・バックブリーカーから片エビ固め、２本目は馬場が16文キック、ランニング・ネックブリーカードロップから体固め、決勝の３本目は馬場が77年９月７日、小樽市総合体育館でのロビンソンとの同タイトル戦で見せた足４の字固めを出し、この体勢から両者同体でリング下へ転落。

ロビンソンは場外でアトミック・ドロップ、しかし自ら膝を打ってしまいダウン、両者リングアウトとなり､１−１の引き分けで馬場が５度目のタイトル防衛に成功しています。

10月17日、盛岡・岩手県営体育館(テレビ収録、観衆4,200人満員発表)大会では馬場＆鶴田組のインターナショナル・タッグ王座にロビンソン＆ワフー組が挑戦。１本目はロビンソンのワンハンド・バックブリーカーからタッチを受けたワフーがトマホーク・チョップを馬場の脳天に叩き込んでの体固め。

２本目は場外での攻防、鶴田とロビンソンがエルボースマッシュの応酬となり、打ち勝った鶴田が一足早くリングに戻りリングアウト勝ち、決勝の３本目は馬場が首固めでワフーをフォールし２−１で馬場＆鶴田組が４度目の防衛を果たしました。

10月20日、後半戦特別参加のテリー・ファンクがディック・マードックを伴って来日､翌21日に記者会見を行ったテリーは「膝が限界に来ている。３年後の自分の39歳の誕生日に当たる1983年６月30日、日本で引退試合を行いたい」と声明し、大きな話題を集めています。(この項続く)