80年8月9日(現地時間)ニューヨーク・センチュリー・シェアスタジアムで行われたWWFのビッグマッチ「Showdown at Shea」に日本から猪木、藤波辰巳が出場しました。同大会は過去72年9月30日、76年6月25日(いずれも現地時間)に開催されていたWWF(WWWF)のスタジアムビッグマッチで、85年3月31日に第1回の「レッスルマニア」が開催されるまでは最大規模のショーでした。
開催がいずれもオリンピック・イヤー(72年ミュンヘン、76年モントリオール、80年モスクワ=アメリカは不参加)なのでプロレス版オリンピックをモチーフとしていたかも知れません。
第1回、72年9月30日(観衆22,508人発表)ではWWWFヘビー級王者ペドロ・モラレスに元同王者ブルーノ・サンマルチノが挑戦したベビーフェイス同士のタイトルマッチで、75分の激闘の後、午後11時を廻り、ニューヨークの市条令により11時以降の興行は禁止されていることからカーフュー・ストップによる引き分けとなりました。
この大会は全日本プロレス旗揚げを控える馬場が視察に訪れ、親交の深い両選手の試合を観戦した他、サンマルチノに全日本プロレスへの協力を要請しています。
第2回は76年6月25日(観衆32,000人発表)は日本時間の6月26日午前11時50分から日本武道館で行われたモハメド・アリvs猪木の「格闘技世界一決定戦」のクローズドサーキット(衛星中継)に合わせて行われました。
4月26日にスタン・ハンセンに首の骨を折られ入院、欠場していたサンマルチノが復帰し、ハンセンとのリベンジマッチ(WWWFヘビー級選手権試合)で8分、サンマルチノの気迫に押されたハンセンが戦意喪失で控室へ逃走し試合放棄しています。
アンドレ・ザ・ジャイアントとプロボクサーのチャック・ウェップナーのミックスドマッチはアンドレのリングアウト勝ちとなりました。
全試合終了後、日本からのアリvs猪木戦が会場の特大スクリーンで放送されています。
第3回目の今回は36,295人の観衆を動員。8月12日付(11日発行)「東京スポーツ」では50,941人超満員発表と報じていますがおそらく東スポは水増しでしょう。
猪木は、全日本プロレスと国際プロレスに来日したラリー・シャープとNWFヘビー級王座防衛戦を行い(60分1本勝負)、9分41秒、延髄斬りからの体固めで完勝し、2度目の防衛を果たしました。
ロサンゼルスから当日ニューヨーク入りした藤波はチャボ・ゲレロとWWFジュニア・ヘビー級王座を賭けて対戦(60分1本勝負)、日本同様、スピーディーな試合展開を見せ10分28秒、ジャパニーズ・レッグロール・クラッチホールド(回転足折り固め)で14度目の防衛に成功しました。
藤波がWWF圏でタイトル戦を行うのは前79年4月17日、ペンシルバニア州アレンタウンでのジプシー・ロドリゲス戦以来で、試合後のインタビューではGロドリゲスの「できなさ加減」に藤波が不満を漏らす一幕もありました。ヘビー級中心のWWFにはジュニアの人材が不足していました。
なので今回は藤波が自分でも手の合うチャボを新日本プロレス経由でブッキングしてもらったというのが実態でしょう。
アンドレはハルク・ホーガンとシングルマッチ60分1本勝負で対戦、ホーガンはアンドレの265Kgの巨体をボディスラムで投げて見せましたが7分48秒、ヒッププレスからの体固めでアンドレが快勝しています。
WWFヘビー級王者ボブ・バックランドと元王者モラレスが夢のタッグを結成し、アファ&シカ・アノアイのワイルド・サモアンズ1&2号のWWFタッグ王座に挑戦。
試合は60分3本勝負、1本目は11分42秒、モラレスが2号(シカ)を回転エビ固め、2本目は4分15秒、バックランドが1号(アファ)を片エビ固めで破り2−0のストレート勝ちでバックランド&モラレス組が勝ち、ベルトが移動しましたが、「一夜限定」のチャンピオンチームだったようで、ベルトはすぐにサモアンズに返されました。
一部では「WWFのシングル王者であるバックランドはルールによりタッグ王者との兼業は出来ない為返上」と書いた文献もありますが、これは後付けでしょう。その通りですとそもそも挑戦すら出来ない。
メインイベントはサンマルチノの愛弟子だったラリー・ズビスコが突如ヒールターンしてサンマルチノに反逆し抗争を展開していましたが、ケージ(金網)マッチによる決着戦が時間無制限1本勝負で実現しています。
試合はサンマルチノが流血したズビスコの顔面をフェンスに叩きつけ、13分59秒、場外エスケープによりサンマルチノに軍配が上がりました。
シェア・スタジアム大会の模様は猪木vsLシャープ、藤波vsチャボ、アンドレvsホーガン、サモアンズvsバックランド&モラレス組の4試合が8月22日放送の「ワールドプロレスリング」90分拡大スペシャルとして同日、品川プリンスホテル・ゴールドホールからの「ブラディ・ファイト・シリーズ」開幕戦の生放送と二元中継されています。
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