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2024年02月13日12:00
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大阪行�セ妖群�寺と文楽/歌舞伎『摂州合邦辻』
(続き)
大阪の旅2日目。
10:00頃、Rホテルをチェックアウト。
一旦なんばに戻りコインロッカーに荷物を詰め込み、身軽になって御堂筋線に乗り天王寺へ。
天王寺商店街を北へ15分程歩くと、右手に四天王寺の五重塔が見えてくる。
四天王寺は593(推古元)年に聖徳太子が鎮護国家と衆生救済のために創建したと言われる、官製では法隆寺と共に最も古い寺らしい。
広い境内の西の端にある「石鳥居(いしのとりい)」から入る。
その先にある西門は通称「極楽門」と呼ばれている。
極楽門を入って今来た西方を振り返ると、彼岸の日(春分･秋分の日)に、石鳥居の向こうに夕日が真っすぐに落ちていくであろう事が実感される。
その先には極楽浄土があって、わが身と浄土は一直線でつながっている、それが「日想観(じっそうかん)」の思想である。
この四天王寺は日想観のメッカと言っていい。
その昔、湾の埋め立てが進んでいない頃には、石鳥居の向こうに浪速江の海が見えて、極楽門、石鳥居、浪速江の海へと、陽は落ちていったのである。彼岸の日の実際の光景を私は見た事がないし、仏教徒でもないが、話に聞くだけで宗教的な感動に浸される気がする。
文楽及び歌舞伎の演目『摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)』はこの四天王寺と日想観が物語のベースとなっていて、木ノ下歌舞伎がこれを演ずるに際し、主宰の木ノ下裕一が事前に行ったレクチャーが大変に分かりやすかったので、以下にリンクを貼付しておく。参考にして頂けたら幸いだ。
・「木ノ下裕一トーク&レクチャー 内容補足」(2018年8/27記)
https:/
今日は、四天王寺見学のあと、石鳥居の先にあるゆかりの「合邦辻閻魔堂」に寄る予定だが、その前に、もう少し四天王寺で見聞きした事について書き残しておく。
極楽門から内に入ると、中央伽藍の入り口である西重門にぶつかる。
伽藍入場料は300円也。
中心には壮麗な五重塔と金堂がある。
金堂に入ると今しも法儀が行われていた。毎日11:00から始まるという「舎利出(しゃりだし)」の儀だとの事。
五重塔から舎利塔を出して開き、釈迦の遺骨である舎利を参詣者の頭上に戴くというもの。
予約の上で献金した特別の者に行っているのだろうと思っていたら、誰でも無料でこれを戴く事ができると聞き、私は俄か教徒と相なった次第。
長い念仏祈願のあと、列のうしろに並ぶと、僧職が1人々々の頭上に、花(？)のような器に入れた舎利らしきものを掲げてくれる。これによって、参詣者は釈尊と結縁され菩提に至る由。
本尊は救世観音菩薩で回りを四天王が護っている。
内壁全面の壁画は中村岳陵の《仏伝図》。
その後、五重塔の下に行くと、当日は開扉されていて、頂上まで上がれるとの事。これもめったにない事とて、靴を脱いで心柱の周囲を巡る螺旋階段(鉄製)を登った。
登るだけで各層のベランダ(まさかベランダとは呼ばないが、何と言うのか知らない)へ出る事はできない。
途中の内壁には万人の位牌がぎっしりと納められており、最上層にはガラスの中に金色に輝く立派な仏舎利の容器が安置されていた。
降りて方形の伽藍を巡り、講堂を見学して外へ。
今回は庭園は見なかった。また、期間限定の宝物殿は残念ながら開いていなかった。
冒頭に、四天王寺は鎮護国家と衆生救済のために聖徳太子が創建したと書いた。その後者を目的として造られたものとして、「悲田院」や「施薬院」他がある。
悲田院は貧しい人や孤児を救うため、施薬院は薬草を栽培し怪我や病気で苦しむ人に与えるため、即ち現代における社会福祉のはしりである。
何れも何処に存在したのか諸説あるが、現在の天王寺区の南端、天王寺駅の北側に悲田院町や悲田院通りという地名が残っているのが手がかりになりそうだ。
これも現地に行って確認する事ができずに終わってしまい、残念だった。
石鳥居から四天王寺を出て、上町台地を真西へ下る坂道(通称「奈良街道」)を歩く。
この辺りは大変に坂が多い。
5分程歩くと、松屋町筋との交差点近くのビルの間に「合邦辻閻魔堂」があった。
今は西方寺の一部として扱われる小さな辻堂であるが、元は聖徳太子を創建とする大伽藍があった由。兵火に遭って焼失。
下は江戸時代中期、寛政年間に描かれた《摂津名所会図》(1796-98刊)第2巻33より〈合邦辻閻魔堂〉。
竹原春朗斎 画、秋里籬嶌 筆。
兵火かいつか分からないが、この絵では閻魔堂の周囲には既に何もなく、遠方に茶臼山と一心寺が見える。堂前には玉手の石碑もない。
ワルガキ共が綱を両側から持って道を塞ぎ、上品そうな女性を通せんぼしている。左手の年増女がそれを叱っている様子。
前述の文楽/歌舞伎『摂州合邦辻』では辻堂は「庵室」となっていて、主である合邦がここに閻魔堂を建てたいとの意向を持っている。
『摂州合邦辻』のストーリーについては、前掲、木ノ下裕一のレクチャーか、以下、尾上菊之助の名演のレポートを参照頂きたい。
・「歌舞伎通し狂言『摂州合邦辻』」(2011年2/9記)
https:/
閻魔堂の正面には合邦の娘お辻、のち大名 高安通俊の後妻になって玉手と名を代えた女性の石碑がある。
前妻の子 俊徳丸からすれば歳の離れぬ継母という事になる。
最終段で、俊徳丸の業病が、死にゆく玉手の血によって治るという設定から、病気平癒を祈願する人々が今もここを訪れるらしい。
物語では、玉手が死ぬと、母は髪を切り、娘の菩提を弔うために尼になる事を誓う。俊徳丸は、彼女への恩を報ずるべく、玉手の母を住職としてこの地に寺を建て、その名を「月江寺(げっこうじ)」とするとある。
その「月江寺」は、GoogleMapで見ると、石鳥居から谷町筋を北へ1km弱上がって左に入ると確かにある。浄土宗の尼寺で、ただ、寺史に『摂州合邦辻』との関係は書かれていないようだ。
閻魔堂とは逆方向であったため、今回は訪れなかった。
閻魔堂から南へ細い道を100m程入ると、児童福祉施設の正門の脇に「玉手水旧跡」の石碑がある。
上町台地は生駒山からの伏流水が地下を流れており、良質な水に恵まれていた。大阪の町中が水不足に悩まされるような時でも、この辺りは豊富な水が出たと言う。
特に有名な水源として「天王寺七名水」と呼ばれた泉や井戸があり、金龍,有栖,増井,安井,亀井,逢坂、そして玉手がそれに当たる。
多くの井戸は既に枯れ、玉手も同様で、今はこの石碑が残るのみ。
文楽/歌舞伎『摂州合邦辻』の最後の最後の場では、謡いに「逢坂,増井の名水」と「天王寺七名水」の名が挙げられ、続けて「仏法最初の天王寺、西門通り一筋に、玉手の水や合邦が辻と、古跡を留めけり」、そう歌われて幕となる。
物語が先かあとか分からないが、ここらは『摂州合邦辻』ゆかりの地が多く、今もさまざまにもの想いをさせるのである。
玉手水旧跡の碑を確認したあとは、更に西へと坂道を下り、通天閣のある新世界へと向かった。
(続く)
大阪の旅2日目。
10:00頃、Rホテルをチェックアウト。
一旦なんばに戻りコインロッカーに荷物を詰め込み、身軽になって御堂筋線に乗り天王寺へ。
天王寺商店街を北へ15分程歩くと、右手に四天王寺の五重塔が見えてくる。
四天王寺は593(推古元)年に聖徳太子が鎮護国家と衆生救済のために創建したと言われる、官製では法隆寺と共に最も古い寺らしい。
広い境内の西の端にある「石鳥居(いしのとりい)」から入る。
その先にある西門は通称「極楽門」と呼ばれている。
極楽門を入って今来た西方を振り返ると、彼岸の日(春分･秋分の日)に、石鳥居の向こうに夕日が真っすぐに落ちていくであろう事が実感される。
その先には極楽浄土があって、わが身と浄土は一直線でつながっている、それが「日想観(じっそうかん)」の思想である。
この四天王寺は日想観のメッカと言っていい。
その昔、湾の埋め立てが進んでいない頃には、石鳥居の向こうに浪速江の海が見えて、極楽門、石鳥居、浪速江の海へと、陽は落ちていったのである。彼岸の日の実際の光景を私は見た事がないし、仏教徒でもないが、話に聞くだけで宗教的な感動に浸される気がする。
文楽及び歌舞伎の演目『摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)』はこの四天王寺と日想観が物語のベースとなっていて、木ノ下歌舞伎がこれを演ずるに際し、主宰の木ノ下裕一が事前に行ったレクチャーが大変に分かりやすかったので、以下にリンクを貼付しておく。参考にして頂けたら幸いだ。
・「木ノ下裕一トーク&レクチャー 内容補足」(2018年8/27記)
https:/
今日は、四天王寺見学のあと、石鳥居の先にあるゆかりの「合邦辻閻魔堂」に寄る予定だが、その前に、もう少し四天王寺で見聞きした事について書き残しておく。
極楽門から内に入ると、中央伽藍の入り口である西重門にぶつかる。
伽藍入場料は300円也。
中心には壮麗な五重塔と金堂がある。
金堂に入ると今しも法儀が行われていた。毎日11:00から始まるという「舎利出(しゃりだし)」の儀だとの事。
五重塔から舎利塔を出して開き、釈迦の遺骨である舎利を参詣者の頭上に戴くというもの。
予約の上で献金した特別の者に行っているのだろうと思っていたら、誰でも無料でこれを戴く事ができると聞き、私は俄か教徒と相なった次第。
長い念仏祈願のあと、列のうしろに並ぶと、僧職が1人々々の頭上に、花(？)のような器に入れた舎利らしきものを掲げてくれる。これによって、参詣者は釈尊と結縁され菩提に至る由。
本尊は救世観音菩薩で回りを四天王が護っている。
内壁全面の壁画は中村岳陵の《仏伝図》。
その後、五重塔の下に行くと、当日は開扉されていて、頂上まで上がれるとの事。これもめったにない事とて、靴を脱いで心柱の周囲を巡る螺旋階段(鉄製)を登った。
登るだけで各層のベランダ(まさかベランダとは呼ばないが、何と言うのか知らない)へ出る事はできない。
途中の内壁には万人の位牌がぎっしりと納められており、最上層にはガラスの中に金色に輝く立派な仏舎利の容器が安置されていた。
降りて方形の伽藍を巡り、講堂を見学して外へ。
今回は庭園は見なかった。また、期間限定の宝物殿は残念ながら開いていなかった。
冒頭に、四天王寺は鎮護国家と衆生救済のために聖徳太子が創建したと書いた。その後者を目的として造られたものとして、「悲田院」や「施薬院」他がある。
悲田院は貧しい人や孤児を救うため、施薬院は薬草を栽培し怪我や病気で苦しむ人に与えるため、即ち現代における社会福祉のはしりである。
何れも何処に存在したのか諸説あるが、現在の天王寺区の南端、天王寺駅の北側に悲田院町や悲田院通りという地名が残っているのが手がかりになりそうだ。
これも現地に行って確認する事ができずに終わってしまい、残念だった。
石鳥居から四天王寺を出て、上町台地を真西へ下る坂道(通称「奈良街道」)を歩く。
この辺りは大変に坂が多い。
5分程歩くと、松屋町筋との交差点近くのビルの間に「合邦辻閻魔堂」があった。
今は西方寺の一部として扱われる小さな辻堂であるが、元は聖徳太子を創建とする大伽藍があった由。兵火に遭って焼失。
下は江戸時代中期、寛政年間に描かれた《摂津名所会図》(1796-98刊)第2巻33より〈合邦辻閻魔堂〉。
竹原春朗斎 画、秋里籬嶌 筆。
兵火かいつか分からないが、この絵では閻魔堂の周囲には既に何もなく、遠方に茶臼山と一心寺が見える。堂前には玉手の石碑もない。
ワルガキ共が綱を両側から持って道を塞ぎ、上品そうな女性を通せんぼしている。左手の年増女がそれを叱っている様子。
前述の文楽/歌舞伎『摂州合邦辻』では辻堂は「庵室」となっていて、主である合邦がここに閻魔堂を建てたいとの意向を持っている。
『摂州合邦辻』のストーリーについては、前掲、木ノ下裕一のレクチャーか、以下、尾上菊之助の名演のレポートを参照頂きたい。
・「歌舞伎通し狂言『摂州合邦辻』」(2011年2/9記)
https:/
閻魔堂の正面には合邦の娘お辻、のち大名 高安通俊の後妻になって玉手と名を代えた女性の石碑がある。
前妻の子 俊徳丸からすれば歳の離れぬ継母という事になる。
最終段で、俊徳丸の業病が、死にゆく玉手の血によって治るという設定から、病気平癒を祈願する人々が今もここを訪れるらしい。
物語では、玉手が死ぬと、母は髪を切り、娘の菩提を弔うために尼になる事を誓う。俊徳丸は、彼女への恩を報ずるべく、玉手の母を住職としてこの地に寺を建て、その名を「月江寺(げっこうじ)」とするとある。
その「月江寺」は、GoogleMapで見ると、石鳥居から谷町筋を北へ1km弱上がって左に入ると確かにある。浄土宗の尼寺で、ただ、寺史に『摂州合邦辻』との関係は書かれていないようだ。
閻魔堂とは逆方向であったため、今回は訪れなかった。
閻魔堂から南へ細い道を100m程入ると、児童福祉施設の正門の脇に「玉手水旧跡」の石碑がある。
上町台地は生駒山からの伏流水が地下を流れており、良質な水に恵まれていた。大阪の町中が水不足に悩まされるような時でも、この辺りは豊富な水が出たと言う。
特に有名な水源として「天王寺七名水」と呼ばれた泉や井戸があり、金龍,有栖,増井,安井,亀井,逢坂、そして玉手がそれに当たる。
多くの井戸は既に枯れ、玉手も同様で、今はこの石碑が残るのみ。
文楽/歌舞伎『摂州合邦辻』の最後の最後の場では、謡いに「逢坂,増井の名水」と「天王寺七名水」の名が挙げられ、続けて「仏法最初の天王寺、西門通り一筋に、玉手の水や合邦が辻と、古跡を留めけり」、そう歌われて幕となる。
物語が先かあとか分からないが、ここらは『摂州合邦辻』ゆかりの地が多く、今もさまざまにもの想いをさせるのである。
玉手水旧跡の碑を確認したあとは、更に西へと坂道を下り、通天閣のある新世界へと向かった。
(続く)
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