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2024年01月20日17:52

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読書日記N o.1590(意識では制御できない。ヒトの身体は自然そのもの)

■養老孟司「自分は死なないと思っているヒトへ」2023年11月大和文庫

昨日、久しぶりに新宿の紀伊国屋書店に行きましたら、養老先生の最新刊が3冊も
並んでいて、驚きました。

世の中が、養老先生の知恵を求めていて、養老先生も、求められれば応えられる
ので、出版の依頼は、引も切らないようです。

私は、養老先生に私淑して、刊行された本の半分くらいは目を通してきましたが、
最近は、とても追いつきません。ただ、養老節はもう出し尽くした感があるのと、
最近は、YouTubeで、養老先生の講演を聴いたりして、やりすごしています。

本書は、養老先生が、東大を退官してから数年間で、あちこちで講演した内容の
記録とのことで、単行本としては2006年に刊行されており、今回、文庫の新装版
として刊行されたとのことです。

帯の文言が、刺激的でしたので、まず、引用しますね。

”「がんだ」と告げられても、臆せず生きられますか。”
”うそっぱちの「現実」を出て、自分の「生」を取り戻す。ゆとりの重要性を説く人間論”

惹句も引用します。

”数値化できないものまで数字で示し、明瞭な目的に向かって、できるだけ合理的、
効率的、経済的に生きる現代人。物事を「頭」で捉えれば捉えるほど、「生」の実感
からは遠ざかる。”

”現実を直視し、よりよく生きるために本当に必要なものはなにか?わたしたちを
がんじがらめにする社会の仕組みに切り込む。”

目次と小見出しの抜粋も紹介しましょう。

■第1章 愚かになる人間
 ■「極楽」に生きる
 ・家から死を締めだす
 ・ひたすらおとぎ話をつくってきた
 ■「世間」を出る
 ・さわらないようにしてきた問題
 ・日本共同体のルール
■第2章 肥大する現在
 ■「時間」病
 ・人体という自然
 ・「人間のつくったものは信用するな」
 ■「知」の毒
 ・「仕方がない」が消えた
 ・死は異常な出来事か
■カチンカチンの世界
 ■「自分」知らず
 ・人は日々変わりつづける
 ・自己もまた諸行無常の中
 ■「生死」のブラックボックス
 ・二人称の死体、三人称の死体
 ・心の中から失われていくもの
■第4章 手入れの思想
 ■「世界」の行きつくところ
 ・意識ほどあてにならないものはない
 ・ハエさえつくれない人間の錯覚
 ■「日本人」の生き方
 ・都会人の運命
 ・人間は無意識のほうが大きい

養老先生はあとがきで言います。

”本書の全体を通底する主題は「死」である。最近口を突いて出るのはmemento mori
ということばだが、これには対句があって carpe diem と続く。”

”死を想え、今日を生きよ。私が幸せだったと感じるのは、仕事がいつも memento
Mori だったのが退官でいったん終わって、その後の人生をまさに「生きる」
しかなかったことである。”

人間は、どうしたら幸せに生きることができるか。

これは、私の読書の大切なテーマのひとつでもありますが、養老先生の本を読んで
きて、ひとつの答に出会った気がしています。

それは、自分というものは、意識で完全に統御することはできない「自然物」でも
あるので、あまり意識であれこれ考えすぎず、生命の奥底から溢れ出る実感を、信頼
して生ききる、ということではないかと思っています。

養老先生は、ご自分でも言っていますが、自分の考えてきたことは、仏教のお経にすべて
書いてあるのに気づいた、ということで、私も、養老先生のYouTubeなどでの言葉を
お経のように聴くと、心が落ち着いてきます。(笑)


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