沢木耕太郎「夢ノ町本通り ブック・エッセイ」2023年9月新潮社刊
1980年ごろ、「テロルの決算」や「一瞬の夏」で鮮烈なルポを発表し、その後、
「深夜特急」など今も読み継がれる作品を書いた沢木耕太郎さんは、後期高齢者
なった昨年も、「天路の旅人」を発表、話題になりました。
私は、沢木耕太郎さんの読者になったのは、2010年頃からですが、2013年に
発表された「キャパの十字架」などは、往年のルポライターとしての面目躍如で
なかなかよかったです、
本書は、その沢木耕太郎さんが、半世紀に渡って書いてきた、本に関するエッセイを
まとめたもの、と言う触れ込みだったので手に取りました。
本書、タイトルがいいでしょ!(笑)
リアルな書店が、今、どんどん閉店していますが、夢の町に、本屋さんの通りがあって
そこのお店に入り浸りながら、読書を楽しむ、というシチュエーションです。
エッセイが書かれた時期は、この半世紀間で、古いものもありましたが、内容としては
決して古びてはおらず、懐かしい作家さんの話もたくさん出てきました。
早速、本書の惹句を紹介しましょう。
”ずっと当たり前のように本を読んできた。そう、旅に出るように――。”
”三島由紀夫、モハメッド・アリ、向田邦子、山本周五郎……。未知の人物との
遭遇が、心躍らせる物語への熱中が、いつだって私を豊かにしてくれた。幼少期
から現在に至るまで、無数の本との出会いを綴る豊潤な36編。”
”『深夜特急』の直前、26歳の時に書いた単行本未収録のエッセイ「書店という街よ、
どこへ?」も初収録!”
目次は、月並みで、内容を伺うのには情報不足ですが、紹介しましょう。
・夢ノ町本通り
・本を買う(貌のある棚;ブレーキ? ほか)
・本を読む(熱すぎず、冷たすぎず;チャンピオンのグラス ほか)
・本を語る(本と映画の日々;ただそれだけの ほか)
・本を編む(山本周五郎との遭遇;一丁目一番地のひと ほか)
・本を売る(書店という街よ、どこへ?一九七三年、冬、紀伊國屋梅田店;秋に売る)
あとがきのラストで、著者は次のようい言います。
”腹ばいになって本を読んでいた幼年時代から、はるかな年月が過ぎた。しかし、
あらためて、いまに至ってもなお、私の甘美な時間が、ほとんど変わっていないこと
に、あらためて驚かされる。”
”本を読むこと、スポーツを見たりすること、映画を見ること、そして旅をすること。
最後の「旅をすること」だけは、中学生になってから覚えたが、それ以外の三つは、
小学生時代の幼い頃に覚え、いまに至るまでほとんど変わらないものである。”
”そして、これから先も、たぶん変わらないだろうと思う。この眼と足が確かなうちは。”
同感される中高年のマイミクさんも多いと思われますが、如何でしょうか。
最後に、本書は、2018年に刊行された「銀河を渡る」エッセイと対をなしている、
とあとがきにありましたが、その本は、読んで読書日記を書いてましたので紹介。↓
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1970731951&owner_id=5540901
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