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2023年10月19日20:05

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【読書】 最近読んだ本 備忘禄

最近読んだ本の、備忘的メモ。

●「美食地質学入門」 (巽好幸著、光文社新書)

「美食地質学」とは、日本列島の地質と日本の食文化の関係を解き明かしていこうというものらしい。日本列島は他に類をみないほど変化に富んでおり、四つのプレートの境界に位置する、世界一の「変動帯」である。その変動帯が豊かな水を生み、これが出汁や豆腐や醤油につながっていく。また、火山大国であることが蕎麦や江戸野菜を生み出している。プレート運動が引き起こす大地変動は、讃岐のうどんを生み出し、瀬戸内海の豊富な魚介、三陸の真牡蠣を育む。伊豆半島の衝突は山梨ワインを生み、日本酒も地球規模の大変動がもたらしたものだ。日本の食文化がかくも多種多様な理由も、日本列島の成り立ちから見えてくるのである。


●「ベートーヴェン一曲一生」 (新保祐司著、藤原書店)

ベートーヴェンの究極の偉大さは、「近代によって近代に勝った」ということであるという。そして、ベートーヴェンを聴き続けるということは、近代に対峙しつづけることであり、或る精神の動きが必要なのだという。そして、一日一曲ずつ、ベートーヴェンのほぼ全作品を聴き続けて、それぞれの作品に対する思いを、著者の本業である文芸評論の視点も加えて綴った本である。詳しく書いた作品もあれば、好みに合わないのかあっさりと書いているのもある。ちなみに、この本に掲載された作品は私も全部聴いているし、この本で取り上げていない作品もあるが、それらも私は結構聴いている。私も「ベートーヴェン一日一曲」をすれば、この本の著者よりも多く書けそうだな。


●「秘境駅への旅」 (吉永陽一著、交通新聞社)

秘境駅と言っても、駅である以上は列車に乗れば行くことはできるのだが、それが「秘境」と言われるのは、周辺に家も道路もないような駅だったり、極端に本数が少なく行くのが困難だったりするからだ。しかし、開設当初はそれなりに需要があったのだ。そんな駅を訪問した記録である。この本に取り上げられているのは、糠南、白井海岸、男鹿高原、霞ヶ丘、新改、宗太郎、毘沙門、福島高松、備後落合、串、会津越川、大沢、ほうらい丘、もたて山、長門本山、小幌、坪尻、筒石、奥大井湖上、小和田と、海外も数駅。何もないというのが秘境駅の魅力だが、中には観光地化している駅もあり、地元利用者がほぼゼロでも、観光客や鉄道ファンが訪れるようになった駅もある。いずれ廃駅、あるいは路線ごと消えてしまう可能性もあるのが現実だが...


●「暗い夜空のパラドックスから宇宙を見る」 (谷口義明著、岩波科学ライブラリー)

「オルバースのパラドックス」と呼ばれる有名なパラドックスがある。無限に広がる宇宙には無限の星があり、一様に分布している。すると、星々が夜空を埋め尽くしていることになり、明るく輝いて見えるはずだ。しかし夜空は暗い。なぜか? パラドックスを解決するには、仮定の正否を考えるのが良い。宇宙は無限に広いのか? 答えは否である。宇宙は有限で星も有限個である。また、宇宙は始まりがあることが分かった。138億年前に誕生したのだ。そして光速も有限であることも分かった。星にも寿命があることも分かった。でも、それだけではパラドックスは解決しない。宇宙は階層構造をなしており、実は星は一様に分布してないのだ。さらに星を形成する物質にも限りがあるのだ。これが結論である。夜空を星で埋め尽くすほどの星が、そもそも存在しえないのである。これらをきちんと数式も付けて、分かりやすく順を追って説明した、面白い本である。


●「喫茶おじさん」 (原田ひ香著、小学館)

大手ゼネコンを早期退職し、現在は無職の57歳、松尾純一郎。妻子とも別居している。バツイチで今の妻とは再婚。再就職のあてもないまま、ふと入った喫茶店をきっかけに、「喫茶店めぐり」が趣味となる。東銀座、新橋、学芸大学、東京駅、アメ横、渋谷、谷中、新橋、赤羽、池袋、京都、淡路町と、その店の看板メニューを楽しみながら各地を巡る。実は松尾純一郎には退職後に家族の反対を押し切り喫茶店を始め、半年でつぶした苦い過去があった。元同僚、元妻、学生時代の友人、喫茶店開業教室の仲間、娘の彼氏など、喫茶店を巡りながらも、そういう人たちと絡んでくる。そして、人生を考えることにもなるのである。主人公と同年代の人間には響くものがある、老後×働き方×グルメ、の小説である。
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