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2023年07月16日14:13

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【復刻記事】民放のど自慢で鐘三つーフランク永井

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【第12回フランク永井歌コンクール告知】
2024(R6)年3月16日(土)17日(日) 大崎市松山体育館
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 今回も「復刻記事」です。スクラップを整理していて見つかった記事です。復刻とうたっていながら、出典がメモしておらずにすみません。わかり次第に追記したいと思います。
 フランク永井についてのご自身の記事は、ほとんどがデビューの頃についてです。しかし、毎回微妙な違いあって、新たな発見もあります。

■民放のど自慢で鐘三つーフランク永井(歌手)

フランク・ながい(本名、永井清人)昭和7年、宮城県生まれ。昭和36年度日本レコード大賞「君恋し」、45年度芸術選奨文部大臣豊など受賞。

 18歳になるのを待って自動車運転免許を取った。自動車の運転は特殊技能といえる時代のことだから、気負って宮城県の片田舎から上京した。東京・芝浦にあった米軍の補給部隊に、トレーラの運転手として就職。折しも朝鮮戦争たけなわの昭和25年秋。少年あこがれの進駐軍である。
 青山墓地の近くに四畳半の間借り。毎朝5時半に起床、基地下という停留所から都電に乗り、途中で外食券食堂へ寄って朝食をとる。再び都電で終着の品川に降りる。国鉄品川駅の地下道を通って芝浦海岸に至り、ゲートの衛兵に身分証明を示して職場にたどりつくという図式である。
 トレーラは、高度な運転技術を要し、かなりの肉体労働であった。まわりは屈強な30歳前後の男たちで、おおかた、戦争体験の持ち主ばかり。未成年者は私ひとりで、この時ほど早く大人になりたいと思ったことはない。
 二年後、仕事にも慣れ、ようやく一人前になったとき、不測の事故に遭って、腰痛が後遺症になってしまった。仕方なく退職することになるのだが、それまでは勤勉で真っすぐだった私の道が、このあたりから妙に曲折してくるのである。
 退職後の半年間は健康保険の手当で暮らした。ぜいたくさえしなければやっていける額であったが、週一回か二回の通院以外、なにもすることがなく、退屈というより苦痛であった。
 無為に2カ月も過ごしたころ、民放のラジオで「素人ジャズのど自慢」というのを聴いた。英語の発音や音程のよくない人が鐘を三つならすので、これなら自分でもやれそうだ、退屈しのぎに出てみよう、と思い立った。
 ひとつ覚えの歌をうたって予選を通過、本番は有楽町にあるビデオホールでの公開録音。
 生まれて初めて人前で歌うのだが、口は渇き、胸は鼓動し、足は立っているのがやっとという有り様。だが、鐘は三つ鳴った。この模様は一週間後に放送されたが、これが自分の声かと耳を疑うほどの美声(これぞ素人ならではの実感)に聞こえた。それからというもの、おのれの声を聞いたきに、胸の鼓動も足のふるえもなんのその、せっせとのど自慢通いが始まった。
 やがて番組の常連になり、レパートリーをふやすためにレッスンを受け、同好のグループができあがった。故人になってしまったが、水原弘もその中の一人だったし、少し遅れて、いま活躍中の沢たまきも入って来た。みんなで民放各局ののど自慢番組を荒らし回った。NHKだけは賞金がないので出なかった。
 このころには健康保険手当も期限切れで、失業保険手当を受けるようになっていた。プラプラ暮らしも半年を過ぎるとすっかり身について、勤労意欲のうせた、なんとも怠惰な人間になっていた。しかし、歌への熱は高まるばかりだった。
 ある日、埼玉県朝霞にある米軍基地のクラブへ遊びに行き、飛び入りで歌ったら、クラブと専属歌手の契約をしないかと誘いを受けた。運転手を辞めてちょうど一年、保険の手当も今日で終わりという、因縁めいたオマケまでついた日であった。
 レパートリーを百曲以上にするため、週一回のレッスンを二回にふやしてもらい、オーケストラ用の編曲を頼み、カネとヒマがいくらあってもたりない。神経がすりへって、ひと月で体重が四キロもおち、素人時代が無性に懐かしかった。当時としてはかなりの高給だったが、出銭の方が多く、以前よりもましてのど自慢の賞金稼ぎに精を出して費用の足しにした。
 昭和30年9月、ビクターにスカウトされた。それまで一年半の間勉強させてもらってお世話になったクラブを去るとき「これからがプロとしての正念場だ。他人の芸に口を出したり批判などせぬように」と、バンド・リーダーから私へのはなむけの言葉だった。(60.6.18)

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