葬儀屋を営むソンギル(アン・ソンギ)は、アパートの半地下に、下半身が不自由な息子・ジヒョク(キム・ヘソン)と二人暮らし。
ジヒョクを介護するヘルパーは、暴れて食事を拒否するジヒョクに手を焼き、「死にたい、と言う人の介護はできません」と辞職。ソンギルは「介護する相手をより好みするのか!?」と、市役所の福祉課に抗議に行く。
ソンギルは仕事が減り、アパートの家賃も滞納。
仕方なく、大手チェーンの葬儀会社と契約を結ぶことに。
そんなある日、ソンギルの隣の部屋に母子が引っ越してきた。
顔に目立つ傷痕のあるウンソク(ユジン)と、小学生の娘・ノウル(チャン・ジェヒ)だ。
ノウルは住人から「ちゃんと勉強しないと、隣のおじさんみたいになるよ」と言われる。
葬儀屋、という職業をさげすんでいるのだ。
ノウルは逆に葬儀屋、という仕事に興味津々だ。
ソンギルに「ねえねえ、死体を見たの?」と無邪気に尋ねたり。
そして、ノウルが可愛がっていた野良猫が死んで泣いているのを見たソンギルは、ひとの葬儀の手順のようにして、ノウルのために「猫の葬式」をとりおこなってくれる。
猫用の小さな柩にも花を入れてやる。
それは、ソンギルがいつも手際よく、クルクルと紙を巻いて作る、お葬式の「紙花」だった。ノウルもそれを手伝う。猫の遺骸は、町はずれに埋めてやった。
葬儀の仕事が入ったソンギルは、ご遺体の柩に「紙花」を入れようとするが、チェーン会社の担当者は「それは契約に入ってないサービスだ、する必要はない」とドライに言う。
ソンギルは、せめて故人は、花に包まれて見送ってさしあげたい・・と思うのだが。
仕事をさがしていたウンソクは、ヘルパーが辞めて困っているソンギルに「わたしを雇いませんか?」と持ち掛ける。
だれにも心を開かないジヒョクは、ウンソクにも暴言を吐き、食事も手を付けない。
ドアノブにひもをかけて首を吊ろうとするし、挙句、スキを見て台所へ這って行って、ウンソクが使っていた包丁を振り回す。
ショックを受けただろうに、ウンソクはそれでも、ジヒョクの介護を続ける。
めげないウンソクの姿に、あきれたようなジヒョク。
ウンソクは、彼がTVの旅番組を熱心に見ているのに気づいていた。
ソンギルは町内でよく知っている、中華料理店のチャンが病気で死んだことを知る。
彼はボランティアでホームレスのための炊き出しをやっており、店の従業員はかつてのホームレスたちだった。
彼らはチャンのために葬儀を上げたい、とソンギルに相談するが、市役所は、チャンには親族がいないため、火葬だけですますように、と言う。
ウンソクは、旅好きなジヒョクの心を見て取って、「外に出よう!」と無理やり車椅子に乗せようとする。
どんなことを言われても動じないウンソクの姿に、ジヒョクも、ひとりでなんとかベッドから車椅子へと、苦労の上、移ることができるようになった。
ウンソクに付き添われ、久方ぶりに車椅子に乗って外出するジヒョク。
ウンソクは、彼が、旅行先で事故に遭って体が不自由になり、医学部の学業を断念したことを知るのだった。
そんなとき、ウンソクのもとへ警察が。
裁判所の決定で、ウンソクは娘のノウルと引き離されて暮らさざるを得なくなる。
それには、悲しい理由があった。かつて彼女は夫だった男から、はげしいDVを受け、顔の傷もその時のものだったのだが・・
祖母と暮らすようになったノウル。
だがノウルは学校の授業参観では祖母の前で堂々と「わたしは将来、葬儀屋さんになりたいです」と発表するのだった。
チャンが炊き出しをしていた公園で、追悼の葬儀をあげたい、と仲間たちが切望。
上司になった担当者はソンギルに、市役所が許可しない葬儀をすれば契約を打ち切る、と通告。
でも、世話になったひとのささやかな弔いをしたい、その願いをかなえてやることはダメなのか・・
ついにソンギルは決心して、公園で祭壇をしつらえる。
だが、市役所の職員に撤去され、上司からは契約終了を告げられた。
ソンギルは、ウンソクからの手紙を受け取る。
それは、彼や息子のジヒョクとの出会いに感謝する内容だった。
そしてソンギルにも、実は悲しい過去があった。
1980年の光州事件で、彼は空挺部隊にいた。
ちょうどノウルぐらいの女の子が瀕死の状態で倒れていたのに、なにもできぬまま去っていたのだ。そのことは長く彼を苦しめ、学業を断念して、父親の葬儀屋を継いだのだった。
ウンソクの手紙は、彼のつらい気持ちを慰めるには十分だった。
とても心に沁みるいい映画でした。
「おくりびと」としての仕事、たとえば死体を清めて、死に装束を手際よく着せたりするさまを、アン・ソンギが、まるでほんとうの葬儀屋さんのような手つきで黙々とこなすさまは、尊いものを見るかのようだ。
紙花をささっと作っていくシーンもよかったですね。
つらい過去を持つ者たちが、思いやり、寄り添って心を通わせていくさまが感動的だ。
ソンギル、ジヒョク、ウンソク、チャンの仲間たちと、交友関係をうまくからめ、人間の尊厳をテーマに、うまい脚本となっている。
オリジナルタイトルは「종이 꽃」で、「紙花」なのですが、邦題の「よりそう花ゝ」も味わい深いと思います。
制作は2019年。こんなにいい映画なのに、なんで今まで日本公開がなかったんだろう、と不思議ですが、第24回釜山国際映画祭ではオープニング作として上映。
主演は、韓国の名優・アン・ソンギ。現在闘病中とのことで、早い回復を祈っています。
ウンソク役のユジンは、若い頃の山口智子みたいな感じかな。
(1月13日、シネマート心斎橋)
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