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2022年12月30日11:20

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360冊目『江戸の川風』

羽山信樹著

由々しき事態。
今年はまだ四つ星作品が出ていない。
このままでは、三つ星の中から「今年の一冊大賞」を選出しなければならない。
過去十二回、一度たりとも三つ星の受賞はなし。
「今年の一冊大賞」の“格”を維持するためには何としても四つ星作品が欲しい。
っつーわけで、リーサルウェポンである羽山信樹御大に御登場していただきました。

今回は戦国武将や幕末の志士が主人公じゃありません。
珍しく江戸市井モノ?
主人公は江戸の町で鮨屋台を引く「早咲屋圭次郎」
丁寧な仕事が評判の腕が立つ料理人というのは表の顔、しかしてその実態はッ京の朝廷が江戸を探るために送り込んだ密偵であった、、、

久々の羽山作品でしたが、やっぱ良いねぇ〜〜しみじみ良い。
リアリティというか、文章の脳内変化率というか、台詞の切れ味というか、俺との相性が抜群。
数ページ読んだだけで、目の前に大江戸八百八町が拡がります。
舞台が文化文政時代、黒船が来るちょっと前ってのも絶妙。
幕末に入っちゃうと、どうしても血生臭い動乱にフォーカスしちゃうんで。
それでいて外圧と時代のうねりが迫りつつ、朝廷と幕府の関係がきな臭くなってきているというまさにうってつけのタイミング。

軸は二つ、日本料理の源流である四条流内における朝廷派vs.幕府派の暗闘と、江戸の日常。
メインの密偵任務より断然脇の方が面白い。
食材の仕入れ方からその調理法、人気メニューの解説や町それぞれの客筋など、江戸時代の飲食店事情がめちゃくちゃ興味深い。
ホントに当時の人々の暮らしぶりがその食から伝わってきます。
そして何より、圭次郎の握る鮨や添える一品料理がマジ旨そうッ!!

だもんで、毒殺事件とかややこしいスパイスを振りかけずに、純粋な市井モノで良かったかも。
旨そうな料理と人情、リアルな江戸体験で充分お腹一杯になれます。
しかし時代のうねりがそれを許してくれません。
台詞だけの登場とはいえ、水戸藩の徳川斉昭辺りが漂い始めると途端に市井モノから歴史モノへ次元上昇してしまいます。
俺はこのまま平和な江戸時代のマッタリ体験で満足だったのになぁ〜〜

で、何やらかんやら色々ありまして、さあ!これからいよいよクライマックスってところで唐突に物語は終了してしまいます。
羽山先生、最後の作品でした。未完絶筆。
享年52、肝臓ガン。

巻末に盟友縄田一男氏の追悼解説が寄せられているんですが、互いに羽山信樹という稀代の才能を愛する者として大いに共感させていただきました。
俺とそう変わらない歳で逝ってしまうなんて、、、本当に若過ぎる。
過去の感想でも書きましたが、今作の結末も含め、もう二度と先生の新作が読めないとなると残念でなりません。
しかし、縄田一男氏も仰ってるように羽山信樹先生の作品は永遠に残り続けます。
微力ながら俺も、羽山作品を世間に紹介する一媒体になれればと思います。
未読作品もまだ何作か残ってますし、過去読破した珠玉の名作の感想文もココにあります。
そして何たって全360冊の頂点に立つあの伝説的作品の輝き。

『流され者』→91
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1883771443&owner_id=263792

例え、これから何百冊小説を読もうとも、この絶対王座が揺らぐことは決してないと断言出来る。
『流され者』に勝てるのは、羽山先生が構想されていた『流され者』の続編だけです。


未完絶筆につき永遠の評価留保
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