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2022年07月16日23:14

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是枝裕和監督、「ベイビー・ブローカー」を語る

先日、話題の「ベイビー・ブローカー」を見たのだが、マイミクさん情報で7月16日に是枝裕和監督のティーチイン付きの上映がTOHOシネマズ梅田で開催されるという。
それで、是枝監督のお話をナマで聞ける貴重な機会なので、もう1回見ようとチケットを予約。実は見終わった後になって、「『はちどり』のキム・セビョクと『幼い依頼人』のイ・ドンフィが出ていた」と聞いて、あれ?どこだったけ?と思ったり、細かい流れがよくわからなかったりということもあったのだ。

午後1時からの上映が終わり、早速是枝監督が登場。
ティーチインの時間は40分ほどだったが、興味深いお話がたくさん聞けました。
以下、その質疑応答の概略です。


ー日本と韓国との撮影の違いなどを聞きたいです

<是枝>韓国では2カ月半かけました。日本だとだいたい50日ぐらいで撮ります。
でも25日ぐらいは撮影がお休みなんですよ。たっぷりとお休みを取ります。逆に休みに何をしようか?と思ったり。
韓国側スタッフの事前のリサーチで、撮影はスムーズに進みました。

ーきょう見るのは2回目です。わたしは監督と同い年なので勝手に親近感を感じてます。
ウソンは翼の星、ヘジンは海へ進むという意味でとても素敵な名前ですね。監督が考えられたのですか。(実はわたし、ごんふくの質問です)

<是枝>いま、韓国では漢字を当てない名前も多くなってるんですよ。海や空に関係する名前がいいな、と思って韓国スタッフに候補をいろいろ出してもらい、その中から決めました。

ー実際の撮影で、俳優さんのイメージが違ったところはありますか

<是枝>あまりなかったです。
ソン・ガンホさんはほんとうにきさくで、イ・ジウンさんも韓国では大人気のスターなのに、気取ったところがない。
彼女、CMや広告にもいっぱい出ているので、ソウルで撮影していると街頭のあちこちで彼女の顔の写真が写り込みそうになったりしました。
カン・ドンウォンさんは、以前に会った時、僕に韓国海苔をプレゼントしてくれたことがあったんです(場内爆笑)。
彼はもう、ソン・ガンホさんをリスペクトしてますから、オフのときソン・ガンホさんが飲みに行くと必ず一緒に行き、ソンさんが帰るまで帰ろうとしない。そしてソンさんのスルメをせっせと細かく裂いたり・・そのまんまシーンに使いたかったような光景です。

ーいま、大学生なんですが、将来映画に関わる仕事がしたいです。アドバイスお願いします。

<是枝>それは・・・たくさん、映画を観てくださいね!
たとえば面白かった、と思う映画があったら、その監督の映画をさかのぼって見てみる。
俳優さんでもいいです。好きな俳優さんの出演作をたくさん観る。
でも以前ならツタヤでそういった映画をさがしてレンタルして、ってことが出来たけど、いま、ツタヤ自体がどんどん減ってるんですよね。

ーわたしは韓国映画が好きでよく見るんですが、この「ベイビー・ブローカー」、主だった俳優陣が豪華なのはもちろん、脇役もキム・セビョクとかイ・ドンフィとか有名どころが出てるじゃないですか。こういった大物俳優のキャスティングはどうやってされたのですか。

<是枝>コロナ禍で、配信ドラマを見まくっていた時期があって、そのときにいいな、と思った俳優さんをキャスティングしました。オファーをし出したら、わりとすんなりOKが来ました。

ー韓国からの留学生です。俳優が演技するニュアンスなどについてお聞かせください。

<是枝>たとえばソン・ガンホさんは、クルマの中で、大きな音を立てられて思わず体をすくめるシーンがありますが、そのとき、ぱっと赤ちゃんの耳をふさいでいるんですよね。あれは台本に書いていたわけでなく、とっさに彼がああいう所作をしたんです。

ーあちこちでこのことを聞かれているかと思いますが、「赤ちゃんポスト」をテーマにしたきっかけは何ですか。

福山雅治さん主演の「そして、父になる」を撮った時、養子縁組制度についてずいぶんと調べました。そのこともきっかけです。でも日本を舞台にすると、日本で「赤ちゃんポスト」と言えば、熊本の慈恵病院なので、特定の場所ということで映画化が難しい。そんなとき、韓国にも同様のものがあり、韓国ではそこに預けられる赤ちゃんの数が日本よりも多いことを知って、韓国を舞台にすることを考えました。

脚本を書くにあたって、実際に「赤ちゃんポスト」に預けられて育った人に直接インタビューしようと思いましたが、プライバシー等の理由からこれはだめでした。でも預けられた施設の職員さんとか周辺の方にお話を聞きました。

ー「生まれてくれてありがとう」というセリフはさいしょから決めていたのですか。

<是枝>そうです。ベタすぎるセリフですが・・だから電気を消してあのセリフを言う設定にした。
これは、赤ちゃんポストに預けられて養護施設で育った男性が、のちに「自分は生まれてきてよかったのか。自分の母親は僕を産んだばかりに不幸になったのではないか」と悩んでいる、という話を聞いたこともきっかけでした。

ー映画制作に関して、これを撮ろう、と思うようなポイントがあるのですか。

<是枝>特段意識しているわけではないです。でも「万引き家族」を作る前、新聞で、ほんとうに、家族で万引きして生計を立てていた一家がいた、たしか大阪だったと思うんですけど・・そんな記事を読んだのがきっかけです。
その家族は万引きした商品を転売してたんですが、なぜか釣り竿だけは手放さずに手元に置いていた。そこからアシがつくわけですが、なぜ釣り竿は売らなかったのか、釣りが好きだったのか?などと思ううち、親子で釣りをしているシーンが浮かんだんです。

ー是枝監督の映画では家族の食事シーンがよく出てきます。今回はなかったような気がするんですが。

<是枝>その代わり、ペ・ドゥナに車内での食事シーンをやってもらいました。でもジャンクフードばかりでしたよね。彼女の食べっぷりがいい。あのシーンのカップ麺を見て食べたくなった、という観客が多いようです。

是枝監督は「・・なんだ」「そうなんだよね」となど、いかにも東京育ちらしい言葉遣い。質問者からの問いにしばし考えたりしながらも、いずれも誠実な答えをし、あわせてそこから派生していろんなエピソードを聞かせてくれました。
映画も、二度見ると改めて、主人公サンヒョン、パートナーのドンス、母親のソヨン、追う刑事のスジンそれぞれの視点からの物語が、うまく絡み合って推進力になっていること、「子どもを捨てた母親、許せない」となじるばかりだったドンスが彼女の心の苦しみに触れるうちに、対応する態度が徐々に変わっていく過程など、実に丁寧に描いているな、と思いました。
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