■東浩紀「ゲンロン戦記」2020年12月中公新書クラレ
副題は、“「知の観客」をつくる”。
春の大型連休、マイミクの皆様はいかがお過ごしでしょうか。
東京は、コロナ禍の中、昨年に引き続き、緊急事態宣言が発出されていますので、
私は、昨年に引き続き、旅行も帰省も都心に出るのも控えて、近所の散歩、
読書、TV、と専ら引きこもり生活です。
思えば、一昨年の今日は、娘夫婦たちと台湾旅行をしていて、台北のNHK
衛星放送で、令和に改元された、東京や日本の様子を観ていました。
今はただ、ワクチンが普及した、英国や米国がうらやましく、我慢するしかない
と覚悟しています。朝、コーヒーを淹れるとき、コーヒーの匂いが確認できると
今日も大丈夫だと、ほっと胸をなでおろしています。
さてさて、本書でした。
本書は、昨年末に刊行された後、新聞や雑誌など20紙(誌)以上で書評が掲載され
話題になった本です。
それを知っていたのと、10年前に著者の本を読んで日記を書いていた↓こともあり、
本書を手に取りました。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1873751712&owner_id=5540901
惹句を紹介しましょう。
“「数」の論理と資本主義が支配するこの残酷な世界で、人間が自由であることは
可能なのか? ”
“「観客」「誤配」という言葉で武装し、大資本の罠、ネット万能主義、敵/味方の
分断にあらがう、東浩紀の渾身の思想。難解な哲学を明快に論じ、ネット社会の未来
を夢見た時代の寵児は、2010年、新たな知的空間の構築を目指して「ゲンロン」を
立ち上げ、戦端を開く。ゲンロンカフェ開業、思想誌『ゲンロン』刊行、動画配信
プラットフォーム開設……”
“いっけん華々しい戦績の裏にあったのは、仲間の離反、資金のショート、組織の
腐敗、計画の頓挫など、予期せぬ失敗の連続だった。ゲンロン10年をつづるスリル
満点の物語。”
30代の若き哲学者が、「言論」を商品にすべく、会社を立ち上げましたが、実業の
世界はそんなに甘いものではなく、血だらけになりながら、10年間を走り抜いた、
まさに「戦記」。
著者は、あとがきで言います。
“ぼくはもともと、カタカナだらけの、とてもややこしい現代思想の世界を専門として
いた。いまでも専門書を読むことはできるし、興味深いと思うこともできる。けれども、この20年ほどの経験で、そのような専門書ではなにも伝わらないし、なにも変わらないと感じるようにもなっている。”
“哲学は生きられねばならない。そして哲学が生きられるためには、だれかが哲学を
生きているすがたを見せなければならない。それはけっして格好いいことではない。”
“もしかしたら恥と後悔だらけのすがたかもしれない。それでもやはり見せなければ
ならない。だれかがそのリスクを負わなければ、哲学は有閑階級の大学人の遊びに
しかならない。”
“ぼくは批評家で哲学者である。ぼくの批評と哲学は、ゲンロンの実践抜きには存在
しない。だとすれば、やはり本書は批評の本で哲学の本なのかもしれない。”
大学の先生としてもやっていけるし、文筆一本でも食っていけるだけの哲学者でも
ある著者が、なぜ会社をやろうとしたのかが、よくわかりました。
でも、言葉は悪いですが、哲学者である「口舌の徒」と実業の世界は、全く別物で、
著者はそれを思い知ったのですが、10年粘って、なんとか、新しい道筋をつけた、
その戦記である本書は、手に汗を握らせるだけのことがあります。
コロナ禍の中で、いい読書でした(^^♪
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