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2020年06月09日05:26

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読書日記Nо.1271(大きな字で書くこと)

■加藤典洋「大きな字で書くこと」2019年11月岩波書店刊

昨年71歳で亡くなった文芸評論家・加藤典洋さんの遺稿集を手に取った。

所収された文章は、岩波書店のPR誌「図書」に連載された短文を編んだ
ものだが、いかつい論客かなと思ったら、率直で、正直で、温かさを感じる
筆致に、とても爽やかなものを感じた。

本書は、昨年の11月に刊行されたが、今年の1月〜3月ころ、新聞や雑誌の
書評欄を賑わし、調べてみたら、15の新聞・雑誌に書評が掲載され、その時
読んでみたいと思い、今頃手に取った次第。

加藤典洋さんの名前は、内田樹さんはじめ、思想・評論系の著書ではよく
お目にかかるが、きちんと手に取ったことがなかった。

加藤さんの、代表的な著書としては、「敗戦後論」があって、加藤さんの
名前とともによく引用される。その本の惹句を引用すれば、下記となる。

“戦後の日本人は、なぜ先の大戦の死者をうまく弔えないのか。なにゆえ今も、
アジアへの謝罪をきちんと済ませられないのか。なぜ私たちは、占領軍に押し
つけられた憲法を「よい憲法」だと感じるのか。このような敗戦の「ねじれ」
の前に、いま、立ちどまろう。そうでなければけっしてその先には行けない―。”

“新しい大戦の死者の弔い方、憲法の「選び直し」など、ラディカルな問題提起
により大論争を巻き起こした本書は、そこでの警告がことごとく現実となったいま、
喫緊の戦後問題を考える上で不可欠の一冊となった。”

「敗戦後論」はいつかは読みたいと思っているが、よくよく考えたら、加藤典洋
さんの本は、実は、4年前に「村上春樹はむずかしい」という岩波新書を読んでいて
読書日記も書いていた。村上春樹論として読んで、著者のことはうっかり忘れて
いた。

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1949288631&owner_id=5540901

さてさて、本書でしたですね。
遅ればせながら、惹句を紹介。

“簡単に一つのことだけ書く文章とはどういうものだったか.それを私は思い出そう
としている。私は誰か.何が,その問いの答えなのか.大きな字で書いてみると,
何が書けるか。

“――発病後も書き継がれ,その死によって幕を閉じることとなった連載「大きな
字で書くこと」(『図書』)を中心に,惜しまれながら急逝した著者が遺した最後の
ことばたちを収める。“

評論家の文章は、難しくてよくわからないものも多いが、この人の文章なら、
腹オチしながら、読み進めることができるなと、改めて思った次第です。

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