教育関係者から疑問の声が上がっていた、英語民間試験の実施が一年見送られることが明らかになった。これはセンター試験に替わる大学受験の共通試験のひとつで、従来とは異なり、国語、数学は記述式に、英語は英検など複数の試験をスコア化させる。
モデルはアメリカのSAT(大学進学適性試験)だろう。いまのセンター試験と異なり、年七回実施され、何度でも受験できるので、一発勝負とならない。詰め込み教育を受けてきた人ばかりではなく、多様な人材が大学の門を叩けるような制度ということもできる。
ただし、実施予定の新テストは、いまのところ日程はセンター試験と同じく一月中旬とされ、また記述式が採用されるために限られた時間のなかで本当に適切な採点が行われるのか、懸念されてもいる。採点者が足りないために大学生などをアルバイトとして雇うなどという話も出ているのだから、その懸念も理解できる。
このうち、英語は民間の試験を採り入れることで、公平性を含めてさらにややこしいことになっている。確かに現在すでにAO試験でTOEICやTOEFLを採用している大学も少なくない。試験で、読む、書くだけでなく、聞く、話す技能も求められるため、合格を満たすとされれば、英語による講義、留学なども可能と判断できる。
けれども、それをセンター試験に替わるかたちで実施すれば、いまの高校英語も大幅に変更せざるを得なくなる。その負担はいまの現役高校生はもとより、浪人生にとっても大きい。
とはいえ、こうした懸念の声があっても、民間試験の導入は2020年度で変わらないとされてきた。すなわち、いまの高校二年生が大学受験を行うときから開始するということだ。
それが一転、文科相の「身の丈」発言で見送りとなった。率直にいえば、「なんだこれ」である。
文科省は、専門家や教育現場からの批判や懸念があっても、いまさら変更できないという立場もある。これを覆したのは、政治判断といえる。おそらくは政権中枢からの意向がはたらいたのだろう。この点は評価したい。
ただ、仮にも大学入試という、受験生にとって大きな試練となるものに対して、これまで一般に関心が薄いというだけであまり反応してこなかったのもまた、与野党の政治家であり、マスメディアでもある。こうした、本当は喫緊の課題なのに、関心がないだけでスルーされているものは他にもたくさんあるのではないか。そんな思いも抱いてしまう出来事である。
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■英語民間試験、20年度の実施見送りへ 制度の欠陥噴出
(朝日新聞デジタル - 11月01日 07:41)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=5847792
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