mixiユーザー(id:2502883)

2019年05月12日15:16

93 view

文章と盗用、剽窃、捏造について

 本を読む人間として最近、驚きとともに受け止めたニュースは、神学者の深井智朗氏が著書で盗用や捏造を繰り返していたとして、東洋英和女学院から懲戒解雇されたというものである。私は、氏の『プロテスタンティズム』(中公新書、2017年)だけで、問題となった著作を読んだわけではないけれども、『プロテスタンティズム』の明快な論理構成を高く評価していただけに、大きなショックを受けた。

 引用した人物そのものが架空で、その人の論文を捏造し、さらにそれを論じるという、単純な剽窃とは異なるレベルであったことも、驚きだった。自らの主張を補強するものとして、その論拠を作り出したに等しい。

 新書の『プロテスタンティズム』では、16世紀はじめにヨーロッパで起きた宗教改革において生まれたプロテスタントの思想が、現在の保守主義やリベラリズムにも強い影響を与えていることを述べている。論の流れがとてもスマートであり、知人にも勧めるほどであった。この本が出た当時、多くの人たちからも高く評価をされていたのも覚えている。

 何がどうして、こうした捏造が繰り返されたのか、それを憶測で語るのは慎みたいところだけれど、自分の語りたいことや主張を正当化しようとするあまり、根拠を都合がいいように歪めたり、勝手に解釈したりとするような誘惑は、特にペンをとる人たちに少なからずあるものに違いない。もちろん、論拠についてのさまざまな解釈はあっていいことだし、それを公にすることによって批判をも受け入れる姿勢はむしろ評価されていい。
 ただ、盗用や剽窃などの一線を越えてしまうケースは、残念ながら学者や専門家はともかくとしても、あちこちで見かけられるものでもある。特にネットでは散見されやすい。文章を誰でも発表できるツールがこれほど広がっていることは同時に、そのあたりのリテラシーにも気を配らなければならないということだろう。
2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する