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2019年05月07日22:43

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鎌田雄一郎『ゲーム理論入門の入門』(岩波新書、2019年)を読む

 そんなにしょっちゅう読んでいるわけではないけれど、学術書に向かう場合は、それなりの覚悟がいる。内容が難しいということもあるものの、結論を導く情報は、例えば新書で一章ぶん扱うくらいの分量でしかないことも多い。では何があの分厚さを構成しているのかといえば、問いから結論に至るプロセス、史料やデータに基づく分析である。これを理解するのがとても大変で、挫折したり、しかけたことは数知れない。

 しかし、いわゆる通説の地位を得た理論や成果は、やはりそれを導く過程に説得力がある。だからこそ、通説として認められているのだ。当て推量、データや史料の恣意的な利用で何となく生まれた結論は、コラムなどでは通用するかもしれないけれど、学術的な評価は得られないし、得てもいけない。

 何でこんなことを不意に書いているのかというと、鎌田雄一郎『ゲーム理論入門の入門』(岩波新書、2019年)を読んだばかりだからだ。ゲーム理論というと、複数の主体の意思決定や行動のかたちを数学的に解く学問であり、入門書でもわけの分からない数式が出てきて頭を抱えるばかりであったが、最近は図解や身近な例を使って説明するものも増えた。
 もっとも、難しいものを分かりやすく、誤解のないように解説するというのは簡単なことではなく、それがかえって著者の能力、その高さを示している。

 もうひとつ、数式を使わないゲーム理論の解説は、それに基づく思考というものが、状況分析にももはや普通に用いられていることを表してもいる。たとえば、選挙の戦略において、有権者からより多くの支持を集めるための手法としても、ゲーム理論は応用されている。情報をどのように活用し、その状況を把握するのかという視点は、文系理系問わず、必須なのだということを痛感する。このあたりは、伊藤公一朗『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』(光文社新書、2017年)を読んだときにも思ったことだ。

 この本は、分量が160ページと新書としても薄く、図表も多いので読むだけならかなり早いペースで巻末までいってしまう。かくいう私も、数時間で読み終えた。ただ、まだ何となくしか理解できていないので、内容についてはもう少し読み込まなければいけない。

https://www.iwanami.co.jp/book/b450147.html
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