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2019年01月27日22:02

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高橋典幸/五味文彦編『中世史講義』(ちくま新書、2019年)を読む

 高橋典幸/五味文彦編『中世史講義』(ちくま新書、2019年)を読む。ちくま新書の「〇〇史講義」シリーズは、テーマごとにその分野の動向を簡単に解説していて、ざっと理解するには適当な本である。ただ、最近の支持されている学説などを紹介するだけで終わってしまうので、もっと踏み込んだ説明がほしい場合は、他の本を当たる必要がある。もちろん、文中や章ごとに参考文献も紹介されている。

 今回の『中世史講義』は政治史というよりも社会史的なアプローチが目立つ。日本中世史も近年、理解や解釈が大幅に変わってきているけれども、その多くが社会の仕組みを問うところからはじまっている。
 たとえば、中国との交易は日本の宗教や文化とも深いかかわりがある。また、宋銭や明銭は日本でも通貨として流通していたから、中世を理解するにはこれを前提に考えないといけない。文献だけでは明らかにならないものも、考古学、つまり発掘や沈没船の引き揚げなどから分かることも増えてきた。

 そうしたところからの解説なので、帯にあるような通史として、平氏政権や北条得宗家の成立過程、室町の平和と崩壊など、政治史をメインに触れたものはない。そのあたりを期待すると肩透かしをくらう。

 ただ、上述したように、いまの日本中世史は荘園公領制のなかで、王家(天皇家)や摂関家、有力寺社、そして武士たちがどういう関係だったかを前提としないと、政治史もうまく説明できなくなっている。そういう意味で、中世史をもっと深く理解するための入門書として、この本は位置づけることができる。

http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480071996/
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